2 事の始まり
◆
「
放課後、帰り
活発よりはお
「これ、今日中に使ってくれない?」
ひながそう言って渡してきたのは、くすんで茶色くなっている何の変哲もなさそうな、十円玉だった。
「僕?」
「うん、
ひなの後ろの方では女子グループのメンバーがじっとこちらを
むしろ、こうして、様子を
そして、自分の後ろからはうらやましそうな男子たちの視線が背中に突き刺さる。これもうっかり断れば、非難が集中するだろう。
「……うん、わかった。ありがとう」
だから、
◆
「ふうん、なるほど。この十円玉にはそんなコンテクストがついてたのか」
「にしても、代償を自分で支払う気もないなんてねえ」
「なんのこと?」
「これ、たぶんコックリさんをやった後の十円玉だよ。コックリさんに使った十円玉は早く使ってしまうことがルールだから」
「え」
「正直、そんな小学生、
そう言って、黒カーディガンは指で、ちんと澄んだ音を立てて十円玉を高く
出てくるだろう十円玉は出て来ず、何の変哲もなかった十円玉は、その手の中に影も形もない。
「……マジシャン?」
「
そして、ごそごそとズボンのポケットから財布を取り出す。
「というわけで、十円玉を失くしてしまったお
止める間もなく、ちゃりん、ちゃりんと百円玉を二枚入れて、自称おにーさんは自販機の前を空けると、にっこり笑って
どかこん、と自販機が震えながら音を立て、ペットボトルが取り出し口に落ちて来る。
ちゃり、ちゃり、ちゃりんとおつりが落ちる音を聞きながらコーラを取り出して脇に
どかこん、とまた自販機が震える。
お茶を取り出した自称おにーさんはぺきっとボトルの
「キミ、
その横でぷしっと
「うん、動物とかの下級の霊を呼び出して、いろいろ聞くってやつでしょ? 怪談とかで出て来たりするもん」
興味がないので細かいルールは覚えてなかっただけである。
おにーさんはその不思議な色の目を少し笑うように細めて、首を
「じゃあ、コックリさんが日本発祥じゃない可能性が高い事は?」
「……そうなの?」
コーラを一口飲んでから、思わず、ぱちくりと
おにーさんは目を細めたまま
「だって、日本なら、こんな
「……くちよせ?」
そう聞き返せば、おにーさんは少し考えるように
「青森の
「ううん」
「日本三大霊場の一つって言われたりする場所なんだけど……あ、霊場は、そうだなあ、最近の
細かいニュアンスが異なると思うけどね、と若干のぼやきが混じった
「まあ、そもそもが火山だから少し景観が一般的な山とは異なっていてね、それもあって誰が言い出したか、現世において地獄に最も近い場所とされるんだよ」
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