Arthur O'Bower 10
「
「……はあ、まあ、そうだね。ちゃんと系統立てればそうなるね。で、まさかそれはオーディンが泉の水と引き換えにした片目ってこと?」
「あの言い方だと、たぶん」
知恵の巨人ミーミルの泉の水を欲したオーディンは、その片目と
エインセルと名乗った
それを祝福とも言っていたから、右目で見たものの情報量が上がったのはそれのせい、と思われる。
まあ、他にもオーディンの権能関係で何かしらメリットがもらえている可能性はある。この
そう思っている僕を浮かない表情で見つめていたシンシアは、何度目かのため息をついた。
「キミ」
「うん?」
「……あんたは、人なんだからね」
「うん……うん?」
反射的に素直に
そしてそのまま、がっと両手で顔を
「ちょっと、シンシア」
「あのね、あんた、何様のつもりだい」
次の瞬間、ぶぎゅ、と強く押し込まれた頬のせいで、口中の空気を変な音を出して
「まったく、あんたはちょっとばかり頭のネジの
「ぶ……」
文句を言おうにも、強制的に形を変えられている
「確かにあんたがここまでやったから、この時点で済んだとも言えるけど、そもそもあんたがいなかったら、こんな赤信号の横断歩道を渡るような結末はあり得なかった」
リスクもリターンもハイな綱渡りをしたのは確かなので、こればかりは文句が言えない。
本当なら、きっとロビンが死ぬか、消えるか、一番
あの時正気に戻った
「あんたには感謝してる。ロビンもシーラもセオドリックも、あたしも」
その言葉の続きが容易に想像できて、それが嫌だから、僕は身を
「別に、そんな高尚なものじゃない。僕は僕の
実際問題、内臓をすっぱ抜かれるより、遥かにマシなのは確かな事実である。片目だし。
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