Arthur O'Bower 9
「ああ、でもさ、なんか右目から入って来る情報がやたら細かい気がするんだよね。いや、呪いだし祝福だって言われたから、まあ、そういうことかな」
そう言ってのければ、シンシアがため息をついた。
「……いいのかい」
「何が? 首を突っ込んだのは僕だもの」
そう返せば、シンシアが
シンシアにとっては他人事なのだから、そうも深刻に受け止めずともいいのだと思いながら笑顔を作る。
「それに右目は生きてるわけだし」
「……あんたの事情を、知らないでもないから、軽々しく言うことはできないけどさ、普通は、貧乏くじって言うやつだよ」
反論はできない。確かに、それはそうだろう。
それでも、僕がたとえそれが
「……うん、まあ、ロビンに自己投影してたのは認めるよ」
神隠し。実母とのすれ違い。祖母との
内容や順番こそ違えど、それらのキーワードは全て僕にも当てはまるのだ。
駆け落ちして、最終的に自身が仕えていた神に僕を託して死んだ母。
そうして守られたとはいえ、祖母自身が認めなかった父の血を引いているせいか、常に必要最低限の接触しかしなかった祖母。
父は、母が死ぬ前に死んだので、僕は覚えていない。
「だから、事が大きくなる前に対処できた事の方が、僕には大事だよ」
「そうもはっきり言われると困るね。あんたは、そういう自覚を持ってそう動くから、余計に
見てるこっちの身にもなっておくれよ。
そうシンシアがぼやいた。
「そう言ってもらえると、ちょっと嬉しいなあ」
「……病み上がりとはいえ、一発入れといた方がいいのかい」
「…………ごめんね、シンシア」
またため息をついたシンシアは、枕元の照明を置いている小物入れの上にマグカップを置いて、僕の頭をぐしゃぐしゃと
「うわ」
「あたし以外にも、そう言うやつはいるっての……で、呪いであり、祝福で、なんで左目を持ってかれたのさ」
「ああ、うん、それはね、ゲルマンのオーディン」
シンシアに
シンシアはいきなりのビッグネームに目を丸くしている。
「は?」
「シンシア、
「マザーグース?
「じゃあ、
「それも、
「
はあ? とシンシアはぽっかり口を開けた。
どちらかというと、理解はしたが受け付けたくないという拒否反応と見た。
その直接の語源は北欧やゲルマンにおける主神オーディンの英語系、ウォーデンに由来するという。大抵の英語学習者がスペリングで
まあ、
とはいえ、曜日そのものとしての元は、ローマ神話のメルクリウス、つまりはギリシャ神話の商売の神にして自身も商売上手なヘルメースの曜日である。ヘルメースの権能といえば、余りに
「
「……そんな大それたもんと? あんたが? 似てるって?」
「うん、まあ、そういうことになるね。夜の嵐の方は
英国のみならず、ヨーロッパ全土に伝承のある
そんなふうな状態なのだから、当然その
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