Arthur O'Bower 4
「お前は、
どろりと、ゆっくりと糸を引いて
その吐息は鼻を通るだけで、喉がひりつくような甘みを感じる。
いっそ、このまま
ウツボカズラの蜜の匂いというものは、虫にとってはかくも魅力的なのだろうか。
「
玉虫色の目は
魅了されかけている自覚はあるので、一つ、二つと数を数えながら、ただその目を見つめ返した。
「週の半ばの日、
ぐっと、頬を包むというには乱暴なまま、
魅了から気は
鼻先が触れる程まで、エインセルは顔を寄せる。
不吉な湿り気を帯びた甘い匂いが強くなる。吐息が肌を
気を
「……嵐の
「
――ああ、ああ、そう、そうなの。そうなのね。だからなのね。
エインセルは、そう笑みを
「だから、
その笑みらしきものの気配の乗った言葉と同時に、ぱっと頬に触れていたエインセルの両手が離れて、そのまま椅子の上にぺしゃりと座り込む。
ヤバい、力抜けてる。体勢のせいだけじゃない。
自然とそうなっていた浅い呼吸を、無理矢理に一度深呼吸して落ち着ける。
エインセルはその柔らかな服がエクルズケーキのカラントでところどころが赤く染まったことも、紅茶で濡れてちょっと透けていることも気にすることなく、テーブルの上から椅子に戻す。
目に毒なので、そうしてもらえるのは非常にありがたい。
「
エインセルは椅子の上に膝立ちしたまま、そう歌った。
「
そこまで終えて、くすりとエインセルが答えを待つように笑う。
ああ、
「……
返さなくては。沈黙は肯定の何よりの証になってしまう。
沈黙は金、雄弁は銀。なれど、それは人相手の話だし、そもそも流れに
「
無茶振りには無茶振りで返す。それがセオリー。
たとえば、「
「
使い古された言葉で
そうであればこそ、これらは振られた無茶振りを
「
精一杯、流れに沿うよう、エインセルの投げかけた言葉に対応しうる文章を並べる。
「
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