Arthur O'Bower 3
すっと人差し指を立てた手を目線の高さまで持ち上げる。
「さて、それでは、もう一つ」
「あらあら、よくばりなのね」
「彼の母親は?」
「あら、だって、この子を
それは想定外の情報だ。
思わず
「
「ええ、シーラはその子の母親で、取り替え子として返されそうになったこの子を助けたのだもの。
なら、保護をするべきでなくて? とエインセルは
ああ、やっぱり、妖精の子をしっかり
「少しばかり遠回りでも、シーラはちゃあんと、本当の子がわかったのだもの。それなら、
さっきまで
そんな考えはおくびにも出さない。
「それは確かに一理はありましょう。けれど、それを彼は望みませんし、彼女も彼と離れる事を望んではないのでは?」
「そうね、だから、いっしょに行きましょうと言ったのに」
すっと温度が下がった。
脳内で黄色のライトがちかちかと点滅するイメージが浮かぶ。あ、やばい。
「
突如として変化した空気感に鳥肌が立つ。ぐっと手を握って、
笑顔のような表情を貼り付けたエインセルが、こきり、と首を
「
「……それはなりません」
「ふふ、
そういうものであるべしと定めたのは人なのだから。
それが僕の信条で、提唱するものだから、これは当然。
「ふふふ、うふふふふふ、あはは、ああ、なんて強情っぱりだこと! なんて、なんて腹立たしくて、
向かい側から、エインセルが椅子の上に膝を乗せて、身を乗り出す。
並の男であれば、
冷ややかなのに、息が詰まるほどに湿った、
――動じてはならない。
ひたり、とその
エインセルは片膝をテーブルに乗せて、掌で僕の頬を包み込んで顔を上に向けさせる。
かちゃん、とカップが倒れる音。かしゃん、と皿が触れ合う音。ぐちゃり、とパイが
赤く長く波打つ髪が僕の顔に落ちかかり、何の感情を読み取るべきかもわからない玉虫色の目が、上から至近距離で
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