How many miles to Babylon? 7
◆
「うわ、めっちゃいい匂い」
あの後、気休めが
庭の片隅にテーブルと椅子をセットしてから、引きずり出した本だとか扇風機の前に戻って、これは戻さないと
そして、それをクリアしてリビングダイニングに戻ったら、この食欲を刺激するミンスパイの匂いである。何故、小麦と卵とバターを焼いた匂いって、こうもよだれが出るんだろうね。
「出してきたんだね?」
「うん、
テーブルの上にはティーセット一式をロビンが確保している。
「あ、これ、使っていいやつ?」
「そうだよ。前に仕方ないから買い取ってやった、他称呪いのティーセットさ」
ロビンがこうして平然と確保してるなら、本当に何もないやつなんだろうけれど、ちょっと気になる。
「他称?」
「呪われてたのは家の方だったってオチ。奥さんが相当参ってたけど、旦那さんが現実主義者でね、呪われてると思ったものを奥さんがバザーで売るぐらいしかできなかったのさ」
なんて
まあ、それなりのティーセットだから、この際いいか。
「えーと、そしたらアレだなあ……どうやってカチコむかなあ……うーん」
「あんたのやり方でだと、あたしもわからんよ」
「んー、一番効率いいのはマザーグースもじるかなあ」
ついクセで、後頭部をぐしゃぐしゃとかきむしる。
詩や童話ほど、暗黙の了解を織り込むものはない。
キーワード的には
「ねえ、
「え? アレかね。
シンシアが思い出すように口ずさむ。
「
「ふーん、なるほど、
それを想起できる組み合わせが元からある一つの詩としてあるなら、無理矢理に繋げるより効率がいい。
「ロビン。ロビンはさ、どっか行くみたいなマザーグースって何か思いつくのある?」
「……
「ロンドンの町にゃどう行きゃいい? ってやつだね」
シンシアが補足してくれる、
しかし、ロンドンか。意外と近いな。
近いけど遠い、遠いけど近い。そういう概念が欲しい。
東洋圏でいう
「もっと遠くとかない?」
「それなら、
ぱっとロビンが目を輝かせて、口を開く。
「
「よし、使える」
即決した。
いや、こういうの、こういうのが欲しかったんだよ、遠くて近い場所に行って帰る概念。
ほくほくしながら考えている内に、シンシアは出来上がった一口サイズのミンスパイをざらーっとさらに流し込むように乗せていた。
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