Good fellows' Robin 7

妖精の取り替え子チェンジリングの話を出してくれたのは、シンシアだったね。まあ、僕は実際そうした事が行われた場合、妖精fairyがどれだけ人として取りつくろえるかなんて知らないけど」


 えてみ言葉を使ってロビンの様子を見てみるが、火掻ひかぼうの衝撃から、ハムスターのようにスープの野菜を頬張ほおばって、もぐもぐする作業に戻っただけである。

 シンシアが目だけでうったえてくるが、無視無視。

 時として、治療に痛みはつきものだ。古代ローマの偉い人も言っている。


「でもまあ、流石さすがに僕も知ってるんだよね。火掻ひかぼう妖精の取り替え子チェンジリングの関係性」

!」


 シンシアが流石さすがに声をあらげ、ロビンはそれにおびえたように手も口も止めた。


妖精fairyは火をいとう、鉄をいとう。ならば、真っ赤に焼けた鉄なんて言語道断ごんごどうだんだ。キミの火傷やけど、そういうことだろう、ロビン」


 固まっているロビンは、視線を揺らしている。

 そちらを向いて、そっとその背中をでた。


「飲み込んでからでいいよ。大丈夫、待つから。シンシアも怒らないでよ、ロビンがおびえてるぞ」

「…………あんたは、もう、あーもう、変人だとは思ってたけど、だから、詐欺師さぎしだの胡散臭うさんくさいだの散々さんざんに言われるのよ」


 ぱくぱくとシンシアは何度か口を閉じたり開いたりして、そしてやっとそう言った。

 しかし、残念ながら、そういった内容は日本語で言われ慣れすぎて、英語であってもダメージはゼロなのである。


「……シンシアも、わかってたの?」

「そこの胡散臭うさんくさい日本人がそう当てられるってことは、まあ、そうなるさ」


 ロビンがぽつりとそう言うと、シンシアがバツが悪そうな顔で答える。


流石さすがにこんな情緒じょうちょに配慮しないやり方でいたりは絶対にしないけどね」

「進展すべきなら、平穏のために停滞ていたいするより、いっそ爆破ばくはすべきだと僕は思うんだけどね」


 まあ、その尻拭しりぬぐいを任せられる人がいればこそ、ではある。

 そういう意味でシンシアは信頼している。それを面と向かって言ったら拳骨げんこつものだろうとも思っているし、今もこのクソ過激派野郎が、と言わんばかりの視線が痛い。


「さて、で、誰がキミにそんな事したんだろうか、なんて予想ぐらいは簡単についちゃうものなんだけど、ロビン、キミの口から、言える?」

「……」

「勝手な憶測おくそくで、キミを傷つけたくはないんだ」


 シンシアにたしなめられる。

 しかし、事実は事実として確認すべきだし、勝手に憶測おくそくを並べたところで、それはロビンにとっての事実を無碍むげあつかうだけである。


「事実は事実だけど、そこにともなう意味は個人でことなる。であれば、当人の口から事実もその周囲も聞き出すべきだ。一個人の一事実を理解するためにはそのバックグラウンド全てを把握する必要があるが、それは非現実的だし、そのバックグラウンドをもとに再構築したところで、。であれば、当人と問答するのが一番良いbestだろ?」

「……あたしゃ、あんたのそういうとこが好かんね」

「僕も好かれるとは思ってない。そもそも好かれてたら、詐欺師さぎしなんて言われたりしないわけだし」


 まったくその通りだわ、とシンシアが大きくため息をついた。


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