Good fellows' Robin 5

「あー、キミの方が逃げてただけだから、僕は逃げない。とりあえず、シンシアの治療は大人しく受けて? 話は後でゆっくりしよう」


 そう言って、そっとそでつかんだ指をほどかせた。

 そのすきに、手際てぎわよくシンシアがガーゼを包帯で固定した。


「とりあえず、他のとこはれタオルでくだけにしとくかね」


 そう言ってシャワーから出したお湯でらしたタオルをしぼって、あっという間にロビンの身体からだいていく。シンシアの激烈に良い手際てぎわを横に何もする事がなくなったので、とりあえずしばらくロビンの様子をじっと見ていた。


 ロビンはちらちらと、興奮したように大きく見開いたままの目でこちらの様子をうかがってくる。


「ちょっと、ロビン動かないで。なんで突然、こんなにに」

「……推論はある。後でこの子とランチ食べながら話そう、シンシア」


 シンシアの邪魔になりそうなので、そう言って、救急箱と軟膏なんこうの入った箱を持って居間に行って片付ける。

 それから、キッチンの方をひょいとのぞいて、シンシアが何を作ろうとしてたかを確認していると、後ろから首ねっこをつかまれた。


「あんたはネズミか」

失敬しっけいな、何か先回りしてできることないかなって確認してただけだよ」


 そのまま、首ねっこをつかんだシンシアに台所から出されると、今度は椅子に座らせられたロビンがじっとこちらを見ていた。

 まあ、先に当人と話しておくのも有りだな、と思ってその隣に座る。


「ロビン」

「……」


 食い入るような視線は僕だけでなく、僕の周囲全体を見ていた。

 きっと、この子の目は、まず、間違いなく――


「ロビン、ねえ、


 そう問うと、ロビンはびくりとして、おどおどと視線を彷徨さまよわせた。


「ああ、ごめんごめん、何が見えてたって、僕はキミをおこらないし、しからない。ただ、キミが見えてるものが知りたい。シンシアも、それを否定したことはないだろ?」

「……」


 こっくりとうなずいたのを見て、にっこりと笑いかければ、少しだけ表情がやわらいだように思えた。


「で、さっき、キミは僕の周りを見ながら、『アナタ、何?What are you?』って言ってたよね。何を見たの?」

「……えっと、ふしぎな、もの。すこし、目をはなすと、かわるけど、でも、同じ」


 思わずつばを飲む。


「さっき、何か言ってたとき、アナタとで、だいじょうぶってわらってた」

?」


 出だしだけ言ってみれば、ロビンはぐにこちらを見てうなずいた。


「……同じって、姿が?」

「うん」


 感嘆のため息をつくしかなかった。

 声まで聞こえてるなんて、予想外だ。


「えっと、?」

「うん、なんだい?」

「……あのね、ずっと、の。でも、のそば、しずかなの」


 それはきっと、視覚的にも聴覚的にもなのだろう。

 ロビンの目の力がどこまでおよぶものかははかれないが、善き隣人達good fellowsに与えられたものだということは間違いない。


「だからね、きのう、ふしぎなひとだなって」

「僕の事を見てたの?」


 こくりとひかえめにうなずく様子は、どう見ても小動物のようだった。

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