5 膨らむは疑念
そのまま、
「ボクらはむこうの法則性を全て把握しているわけじゃない。全て把握なんかできない。そもそも科学における定義や定理と違って、完全には言語化や数式化なんてできないものだし、科学自体も今この世界の全てを
身じろぎ一つもしないロビンは、あの
「それでも
「ここはあくまで先生の持論なんですけどね。でもそう
そう言いながら、
「じゃあ、キミが見た、これに与えられてしまった志向性はなんだろうね」
かちゃりとロビンが眼鏡を
「マユ、キミはこれを見て恐怖した」
「……えっと、今私には見えない、です」
「オリカは?」
「何も」
ふうん、とロビンが言って、振り返らずにまたすぐに言う。
「じゃあ、マユ、後ろ向いて」
「え」
「また、コレを見たいならいいけど」
「は、はい」
あのぞっとする感覚を思い出して、
「オリカ」
ロビンの呼びかける声の方向から、ロビンもまた窓から目を離したことがわかる。
つまり、今窓を見ているのは、さっきまで
彼女はほう、と一つ息をついて言う。
「本当に逆さまの人影に目、という感じですねえ。これは突然見えて、しかも目が合ったらびっくりします……あと、少し不思議なのは、こう、なんとはなしに、不安とか
その
その様に
「つまり、これは普通、一人にしか見えないってことか」
ロビンの声がまた窓の方を向く気配がした。
「まあ、ボクみたいなものの目には意味ないわけだけど。マユは怖いならそのままでいいよ。で、オリカ、反応してるね」
「ええ、はい、さっきから食わせろ、とうるさいですから。でも私には引き寄せられません。つまり、実質的な害はほとんどないです」
食わせろ。何が。
引き寄せられない。どういうこと?
じっと
「言いましたよね。私は、護衛と言うよりは
けれど、とりあえず、この内容は
この起きてる事象と怪談は
「ええっと、害はない、んですよね。で、さっきのその、幽霊とかそういったものの正体についてのことからすると、お二人の見解では、それって幽霊じゃないってことになるんですよね」
「そうだね」
幽霊ではない。飛び降りたというその人の魂そのものではない。
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