2 逆さまの幽霊
――西側階段の四階と三階の間の踊り場。夕暮れ時にその踊り場の窓の外を
昔、この学校で飛び降り自殺した生徒の幽霊が出るからだ。
その生徒は頭から地面へ落ちたので、窓の外に現れるその幽霊は逆さまの姿をしている。
それが、
「……知って、ます。それに、さっき、その」
「靴の左右を間違えてでも走って来たのは、それを見たから、ですね」
「えっと、その、単に見たんじゃなくて、その、なんだろうってよくよく見ちゃって、目が……」
「合ったんです?」
こくり、と
「本当になるほどですねえ。そしたら、先日、この学校を出た、すぐそこで交通事故があった事は?」
「知ってます、けど」
つい一週間ほど前のことだ。
校門を飛び出した生徒が、車と接触する事故を起こした。
その翌日に緊急朝礼があったので、イヤでも覚えている。
「ロビンさんがいなければ、たぶん
しかし、
「ああ、よかった。今日で、本当によかった」
「え?」
「だって、
にこにこと
「オリカ」
「あ、ロビンさん、お帰りなさい」
校舎の裏手に回って行った方とは反対側から、金髪の青年、ロビンが戻ってくる。どうやら校舎の
「どうでした?」
「……こっちからはあんまり」
驚いた様子もなく、戻ってきたロビンは小さく肩を
「そもそも、話が条件付きだから、そんなことだろうとは思ったけど……」
「あ、そうだ、ロビンさん、ロビンさん、名乗ってませんよ、ロビンさん」
「……ロビン。ロビン・イングラム」
「あ、
「マユね。で、オリカ、どこまで聞いた?」
「目が合ったそうです」
にこにこと
そのままロビンの眼鏡の奥の
「目が?」
何も言えずにただ首を縦に振ると、ロビンはため息をついて後頭部を
「じゃあ、当初の通りで行こうか、オリカ。
「あー、そうなります? まあ、ロビンさんがそう言うなら、私がいれば何とかなるってことですよね」
「オリカがいて、何ともならない方が少ないよ」
ぽん、と
「……あの、その、お二人は一体」
ロビンがまた顔をしかめて、青い目を
「オリカ、説明してないの?」
「ええと、その前にロビンさんが戻ってらっしゃったので」
「例のウワサ、昔にもあったって知ってる?」
「はい?」
「昔にも似たようなウワサがあった。けど、いつの頃からか誰も語らなくなった。そして、最近また流れ出した」
端的にロビンが言う。
「まあ、この事態を
ふっとため息をついて、ロビンは眼鏡を押し上げた。
「ここまで言えばわかるでしょ。というか、察してはいるでしょ、最初から」
「端的に言えばですけど、霊能力者、みたいな?」
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