ミューゼリアのノート

〈登場人物たちの現在の状況のまとめ〉


・シャーナさんについて

 赤い液体(毒薬とも呼ばれている)から救出に成功。

 これで、優しいシャーナさんは液体の悪影響によって精神は歪まず、ゲームの時の様なヒステリックな性格にはならないだろう。

 私は知っていたが、シャーナさんからこっそり王太子と婚約していると教えてくれた。また、婚約発表はデビュタイトの時に発表すると言っていた。かなりズレてしまったのは、元公爵夫人であるファシアの影響だ。アーダイン公爵は慎重に動いている。

 レーヴァンス王太子とシャーナさんの距離がどう縮まるのか気になるが、私は彼女の味方として絶対に情報を口に出さない。



・レーヴァンス王太子の孤独について

 ゲームとは違い、行動力があって好奇心が旺盛な性格に見えた。また、王太子自身は赤い液体の影響を受けていない様子だった。もしくは、毒に強い耐性を持っている。

 レーヴァンス王太子の性格の変化はシャーナさん、ラグニールさんや周囲の人達だけでなく、兄様も関係している様に思う。誕生会の時、兄様は赤い液体を口にしてしまった影響で一時的に体内の魔力の乱れが生じた。もし、治療が間に合わずに亡くなっていたとしたら、レーヴァンス王太子は責任を感じると共に相当なトラウマになっていたと思う。大切な人を守りたいと人と距離を離しつつも、一緒にいたいと思い、と矛盾した思いから、心がすり減ったのかもしれない。

 あくまで予想。兄様が生還した事で何かしら変化はありそうだと思う。



・ラグニールさんについて

 設定では、レーヴァンス王太子の乳兄弟(王太子の乳母の子供)で、ゲームの時代にはすでに王太子の臣下となっている。

 今のところ兄様とかなり仲良くしていて、屋敷に遊びに来た時には私に銘菓や上質なお茶をプレゼントしてくれた。ゲーム上では登場しなかった兄様との交流によって、彼がどう変化するのだろう。

 


・イグルド兄様について

 レーヴァンス王太子とラグニールさん達の関係は良好らしい。学園でも、何かと三人で一緒に行動していると聞いた。

 戦闘面では順調に強くなっていると本人が言っていた。最近は、剣よりも槍の方が使いやすいと路線を変更して、練習している。朝練を見せて貰ったら、とても熱心な様子で槍の稽古をしていた。私もその姿勢を見習いたい。



・アーダイン公爵について

 ゲームで見た時と、あまり印象が変わらない。迅速な賠償への対応を見ると、どうしてファシア夫人に騙されたのか理由が分からない。ファシア夫人が色々と工作を行っていたが、公爵家は大勢の人が行き来するから誰かが公爵に知らせていそうだ。

 謎は残るが、もし今を〈正気〉と捉えるなら、公爵家で大きな問題が起きてもしっかりと対応してくれると思う。




・王室付の魔法使いについて

 ファシアや貴族達が捕らえられる時にはいなかった、と今更思う。彼もまた攻略候補の魔法使いと同じように神出鬼没なのかもしれない。レフィードの存在がバレてしまいそうなので、会いたくはない。




・ロクスウェルについて

 彼は、リティナとの交流が無ければ攻略候補たちと接触しないキャラ。すでに発明家としての頭角を現している。ライバル視されているが、良好な関係を築いていると思う。

 私がお題を出したことをきっかけに天文学の先生と出会った。彼はロクスウェルの理解者となったようだ。夏休みは寮で過ごす彼は、天体観測の会合や発明の博覧会に連れて行ってもらえると喜んでいた。良識のある大人達と巡り合って、才能をグングンと伸ばしてほしい。




・アンジェラさんについて

 魔物とダンジョンを研究する学者。単独行動している所を見ると、かなりの手練れであり、同じ研究をしている人は少なそうだ。ゲーム上では登場しないが、私に開示してくれた知識の多くは設定にはないものだった。

 転生した私にとって、この世界はゲームではなく現実。今、最も知るべきなのはゲームの外の知識だと思うので、教えて欲しいと思う。



〈今までの疑問。新しく知った事〉



・王族の赤い瞳について

 国王陛下と王太子の瞳が、赤から赤紫又は紫に変化した。

 理由は現時点では不明。騒動で貴族の家の取り潰し等が遭った事を考えると、白鷲の鎖の数によって色が変化するのかもしれない。


・神脈について

 世界中を巡る星の血管のような魔力の流れ。

 それを国王の秘術である〈白鷲の鎖〉で固定させ、各地を豊かにしている。

 レンリオスの屋敷近くの泉は神脈がほんの少しだけ湧いていて、レフィードがその中で眠っていた可能性がある。



・魔素 (本から一部抜粋)

 魔力の元となる分子。10年前に発表された新しい概念。肉眼では見ることは出来ないが、空気中や水に溶け込んでいる。それを精霊や微生物が食べて、栄養に変えている。千年樹の年輪に出来る結晶や、シャンティスの生育に欠かせない。魔鉱石の属性が複数含まれるのは、これが原因でもある。


 2種の違いとして簡単なまとめ。

 魔素→目には見えない

 魔力→肉眼で見える現象(主に魔術)や物質。


 子供が魔力を貯めてしまい引き起こす体調不良は、血中に魔素が多く溜まってしまい魔力となってしまう症状であると、本を読んで知った。

 赤い液体の症状は、この魔素が過剰に生産、体内で自然と魔力と変換され一部が溜まり循環を乱すのではないか? 

シャンティスは魔力を分解し循環を整える効能が強く、それを〈浄化〉と言うのではないか?

 生物が魔素を魔力に変換する仕組みはまだ解明されていないと本に書いてあるので、そのように推測している。

 なぜゲームではこの情報が出されていないのか、気になる。科学的な分野になってしまったり、詳細過ぎてプレイヤーの頭に入りきらないからなのかもしれない。

 一般的にはまだまだ〈魔力〉の方が認知されているので、そう言っても問題は無さそうだ。



・負の想念について

 不吉な現象を引き起こす力。全ての現象や物質に赤い色が関連付けられている。

 悲しみや苦しみ、恨みなどの暗い感情によって発生し、レフィード曰く「巡り巡るはずの感情が留まり続け、あるべき場所を忘れ、魔力を拠り所にしてしまった存在」だ。

魔素の様に見目には見えないが、一定量溜まると集合体となり魔力に近いものとなったと考えて良いと思う。




・単一魔学合成系とは、魔素・魔力のみをエネルギー源とする生態系。

 遺物の周囲に張られた結界の中である聖域や、神脈の吹き出す場所に形成される生態系。極めて魔素が満ちている空間。詳しい生態系ピラミッドは教えてもらえなかったが、魔力の純度が高いシャンティスの生息域とはこのことだと思う。

 800年以上前は、精霊が多く生息していた。聖域の様な場所はいくつも存在していたが、妖精王との戦争で多くが消失した。世界から消えたのではなく、神脈へと逃げ込んだと今なら推測できる。




・複合魔学合成系。日光と魔素・魔力をエネルギー源とする生態系。

 魔力を必要としない生態系と魔学合成系の中間を表す名前。

 世界のほぼ全域がこれだと思うが、アンジェラさんの発言以外で本に記されていない。まだ発表されていないか、まだ普及していない概念と思われる。

 魔物は毒素をまき散らす様な危険な種もいる事もあり、動物よりも生態研究が進んでいないのが理由だ。




・ダンジョン。単一魔学合成系を有する一帯を指す。

 風森の神殿の場合、聖域以外は全て複合魔学合成系になる。ただ、町の近くの森に比べて遺物から溢れた魔素の恩恵は強く、多様な生態系と独自の進化を遂げた動植物達が生息している。また、魔物も通常の生息域ではない種が巣を作っている。

 ダンジョンの崩壊は、魔物達の生態系だけでなく、農耕などの第一生産にも悪影響が出てしまう。それを防ぐための方法を確立するだけでなく、領主たちへ呼びかける必要がある。




・冒険者について

 廃止されて存在しない。ゲーム上の設定と乖離している。

 しかし、アンジェラさんの内容とゲームの設定は類似している点はある。過剰な狩猟と採取、環境の破壊などの問題だ。

 魔素に比べてこの話は、二つの内容をまとめて、ゲームの裏設定や、条件開放で見られる設定に載せても良い様にはずだ。

 リティナが魔法使いだから、必要のない設定と判断されたのだろうか。彼女が多数のクエストを受けられる仕様を考えると、冒険者と似ている。現実として生活する私には、彼女だけ特別扱いされる理由はなんだろうか、と思えてしまう。

 


・やるべき事について

 リティナが遺物を回収すれば、風森の神殿などの大型ダンジョンは崩壊する。国にとって大きな痛手となるが、妖精王との戦いの際に起きる〈反創世〉は世界を揺るがすものであるため、ゲーム内では黙殺されているに等しい。

 住処を失った魔物が街道や町の周囲を闊歩し、人々を襲ってしまうのが予想されるが、ゲーム上ではそこまで大きく描写されず、討伐クエストのみでしか知ることが出来ない。

 病気だけでなく、各地で多くの犠牲が出てしまうのが想像出来る。孤児や難民が溢れてしまう。国は、王都だけではない。最小限の犠牲で終わらせるだけでなく、ラスボス撃破後の世界を考えると大型ダンジョンの存続は必須だ。 

 私は、それを食い止めたい。

 

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