第44話 マゾ妹
部屋に入ると妹はベッドの上で仰向けになっており、その顔は真っ赤に染まっていて、瞳はハートマークが浮かんでいるように映る。
「お兄様、もう限界ですぅ」
妹はあの時の一件以来、すっかりオレに依存してしまっており、こういうのはもはや日常茶飯事となっていた。
妹の服装は両親に見せるのもあってか、肌の露出が少なめな格好をしている。しかし今の妹はスカートを履いておらず、ノースリーブのシャツにショーツという、あまりにも刺激的な格好をしていた。
「お前、いくらなんでもこれはやり過ぎだろ……」
「えへへ、申し訳ありませんお兄様。お兄様にあられもない姿を見られるのが嬉しくてつい」
「はぁ……ほらよっ」
断ると襲われるなど後が怖いので、オレは妹の上に覆い被さる。その際、オレの胸板に妹の柔らかなものが強く押し付けられた。
「あんっ……お兄様の匂い……すん……すん……はぁ、起床後から換算して5時間26分54秒も待たせるとは、全く罪な両親です」
妹は一心不乱にオレの胸に顔を擦り付ける。
それにしても妹の部屋は可愛らしい。中にはオレの写真が大量に貼られており、ぬいぐるみなどもあることからかなり女子力が高いことが分かる。
だが、よくよく見ると爪が大量に入っている、おやつ用、保存用などと書かれたラベルの貼られた瓶が棚にしまわれており、どうにもこの部屋の主の狂気性を感じてしまう。
「お兄様……早くしましょう」
「待って、まだ準備できてない」
「うふふ、なら仕方ありませんね。ではお待ちしています」
妹はオレの下腹部を撫で回しながら妖艶な笑みを浮かべている。お尻をフリフリとして誘い、オレが安易に近付くと唇を颯爽と奪う。
そのまま舌を入れてきて、唾液を混ぜ合わせてくる。
妹のキスはとても上手い。まるでオレの弱点を全て把握しているかのように、的確に攻めてくる。そしてそれが終わると、次は首筋や耳元を攻め始める。
「お兄様の脂っこい味付け、最高です!」
「そいつはどうも。ほれ、ご褒美だ」
「ありがとうございます!」
オレが頭を優しく撫でると、妹は猫のように喉を鳴らす。
「もっと褒めてください!もっともっと!」
「ああ、偉いな怜は。オレの可愛い妹だよ」
「はい!お兄様の従順なるペット、大和怜であります!」
オレが妹を褒めると、彼女は満足そうな表情をして、オレの顔に自分の顔を押し当ててきた。
その後たっぷりと甘えた後、妹はオレから離れる。
そして服を脱ぎ始め、オレはその光景を眺めていた。妹はそんなオレの様子に頬を染めながら微笑む。
彼女の裸体は綺麗の一言だった。
白く透き通った肌に、くびれた腰回り。豊満なバストにキュッとしたヒップライン。そのどれもが美しく、芸術品を見ているような感覚に陥る。
妹の身体は汗ばんでおり、それがより一層官能的に思わせる。
妹はオレに見せつけるようにしてゆっくりとした動作でショーツを取り去る。
オレは裸になった妹を抱きしめると、そのままベッドに押し倒す。
「ふわぁぁ、お兄様激しっ」
妹は嬉しそうに声を上げると、両腕をオレの首に回し、脚を絡ませてくる。
オレは妹を抱き抱えたまま立ち上がる。
彼女は一瞬驚いたものの、すぐにオレに抱きつく力を強め、オレに密着してくる。
オレはそのままベッドの上へと移動し、彼女を横たえる。
すると妹は潤んだ瞳をこちらに向けてきた。
オレは何も言わず、彼女の上に覆い被さる。我慢できなくなった妹から激しく口付けを交わし、互いの唾液を交換し合う。その味は甘い。
妹の肌からは熱を感じる。それは妹が興奮していることの証左であった。
「お兄様に抱かれて、幸せぇ」
オレは妹がこんなに幸せそうにしているのを、今まで見たことがなかった。
妹は嬉し涙を流しながらオレを求め続け、その度にオレも彼女にスキンシップを与え続けた。そろそろ満足したかと思い、オレが自ら離れようとしても、妹はなかなか離れてくれない。
「お兄様、お兄様!」
オレを味わう妹の瞳は泥水のように濁っており、完全に理性を失っていた。だがそれでもなお、オレを視認し、求めることだけは忘れていなかった。
「お兄様、しゅきぃ」
オレは妹のことを強く抱きしめる。
「愛してますよぉ、お兄様ぁ!」
妹としてならオレもだと伝えるために、オレは再び妹に覆い被さるのだった。それから数時間後、疲れで狭まった視野による影響か、妹の蕩けた顔が強調される。
「はぁ……お兄様の匂い……」
すっかり日が落ち、夜の帳が降りてきた頃、ようやく妹との情事は終わりを迎えた。
妹はオレの腕の中で寝息を立てている。
その姿はとても無垢なものに見えるが、実際はとんでもないものだと散々思い知らされた。
勉強とかこつけてオレを自室に誘い出した妹だが、もちろん妹は宿題を昨日のうちにしっかりと済ませており、天才らしく抜け目は無い。
しばらくして、妹の目がゆっくりと開かれる。
「こんばんわお兄様。そろそろ下に降りましょうか」
「うん」
「うふふ、お兄様興奮してる。あたしごときで喜んで頂けて光栄です」
妹は上体を起こすと、オレの唇を奪い舌を入れてきた。オレはそれを受け入れ、妹の背中に手を回すとギュッと抱きしめた。
妹は目を閉じて、オレの唇を貪っている。その表情は実に幸福そうだ。
やがてオレから離れ、ベッドから降りると服を着始める。
「お兄様の大好きなスカートとお洋服をチョイスしたんですよ」
ミニスカートにブラウス姿の妹は、とても可愛らしい。
オレが見惚れているのを察したのか、妹は照れ臭そうに笑った。
妹と共に部屋を出て、階段を下りていく。
妹は終始ニコニコしており、オレの手を握る力も強くなっていた。
「お兄様……いえ、兄貴、とりあえずここまでね」
怜は家族のいる一階に差し掛かるとお兄ちゃん嫌いモードを発動させ、オレに冷たく当たるような演技を再開する。
「おう怜。今日は勉強捗ったか?」
うちの父さんは親バカで、特に妹のことが大好きである。可愛いからね。
父さんの問いかけに妹は満面の笑顔を浮かべた。
そしてオレの方に振り返ると冷たい視線を送ってくる。無論演技であり、残念なことに彼女の好意はオレにのみ注がれている。
「あたしのことを心配しているなら、パパはとんだ心配性ね。このあたしが兄貴みたいに高校の勉強で困るとでも思ってるわけ?」
「なっ!?」
父はショックを受けたような顔をする。まあ無理もない。演技をする妹は高圧的だからな。
「ふん、たっぷり勉強してきたから、パパは安心してよ」
オレを一瞬、色っぽい目で見る妹に対し、オレは小さく微笑むことで答えた。
「お、おお!そうか。じゃあお小遣いをあげようかな。ほらこれだ」
父が財布から札束を取り出すと、妹は満更でもない様子で受け取った。妹がめちゃくちゃ可愛いからって、父さんは甘やかしすぎだよ。
「ありがとうパパ。これで欲しいゲーム買えるわ」
妹は最近シュミレーションゲームにハマっているようで、コンシューマーゲームをいくつか買い、やり込んでいたりする。
内容は主人公が妹の、お兄ちゃん攻略ゲームというこれまたマニアックなものだ。
「へぇ、お前が欲しがるものなんて珍しいじゃないか」
「ちょっと気になるものがあったのよ」
父さんは妹の頭をわしゃわしゃと、髪が乱れることもいとわずに撫でる。妹も嫌そうな素振りは見せない。
「もう子供じゃないんだけど……」
「すまん、つい嬉しくなってな」
「ううん、いいのよ。だってあたしはパパの娘なんだもの」
このモードでは絶対に見せない優しい笑みを浮かべる妹はオレを睨むふりをしながら食卓へ着く。
「はい、ご飯ですよ。みんな席についてね」
母さんの声に従い、オレや父さんもそれぞれの椅子に座る。
「いただきます」
全員で手を合わせ食事を摂り始める。
今日のメニューは白米に味噌汁、焼き魚に肉じゃが、お浸しに豆腐と和風の料理で占められている。
色とりどりに並べられた料理たちはまるで様々な色を持って発光する宝石のように美しい。
母さんも妹に勝るとも劣らない料理上手であり、家庭的な一面を持っているのだ。
オレが食べている姿を妹がじっと見つめてくる。とてもエロい目をしていて、また興奮しているのがすぐに分かる。
これはいつものことなので気にせず食事を続ける。
妹は家族が見ている都合上、表向きにオレを嫌っているように振舞っており、普段の彼女はツンツンするばかり。
だがこうして隠れながら、オレを性的な目で見るときだけは本心からの愛情を示してくれる。嘘で覆い隠さない真実がオレの身を焼いている。
オレのことが大好きで、もはやオレの匂いだけで発情してしまうくらいに興奮してしまっているのだろう。彼女はしきりに体を震わせており、今にも果ててしまいそうだ。
「あら、怜ったら落ち着きが無いわね」
「気のせいっ、よ」
興奮しているのだから、落ち着きが無いのは当然のことで、彼女は身に降りかかる異常事態に気付きながらも懲りずに、オレを性的に見続ける。
オレが食事を終えようとする頃、妹は限界を迎えてしまいそうになっていた。
しかし、ここで盛大にお漏らしをしてしまえば、オレに迷惑をかけると思って我慢しているようだ。
オレに嫌われたくない一心で、必死に堪えている。
そんな健気な姿を見ているうちに、オレは彼女を愛おしいと感じてしまう。そして同時に虐めてやりたいという感情が湧いて出る。
前から思っていたが、オレを好いてくれる女の子がいるのを良いことに、彼女たちとイチャイチャしたいというクズの欲望が最近になって顕在化しつつある。
その汚さは例えるなら、綺麗な海で泳いでいたはずなのに、いつの間にか底なし沼に落ちていた感覚に似ている。
オレは、妹がオレを見ているのを確認してから口を開いた。
そして彼女に向かってこう言った。
――怜、したいんなら遠慮なくしていいぞ?
仮にも両親の見ている前でそんことをやってみろ。妹は変態のレッテルを貼られて、家族から軽蔑される。
それを理解している妹は、おもむろに立ち上がるとトイレに向かおうとする。
「ごめんなさい。お兄様の所有物である以上、そのようなことは他人の心象を悪戯に悪化させることに他なりませんので」
荒れ放題の無法地帯だと思われた妹の思考にも一応の良識はあるようだ。妹は両親やオレに対して申し訳なさそうにしながら、食卓を離れると、小走りで駆け足になりながら急いでトイレに向かった。
マゾ妹にも最低限の一線はあったようで、少し安心だ。
もし、これで彼女が人前でも平然とお漏らしするような変態だったら、どうしようかと不安に思ったりもしていたのだが。
トイレから出てきた後の妹の呼吸はマゾ特有の荒々しさがあり、妹も相当興奮していることが分かる。
妹の表情は快楽に染まっていて、妊婦が発するようなふー、ふーという呼吸音がリビングにまで聞こえてきた。
彼女の視線にはもうオレしか映っていない。
オレだけを見て、オレだけを想って、オレだけに尽くして、オレのためだけに生きる。それが今の彼女の生き甲斐であり、存在意義なのだ。
妹がオレを愛してくれる限り、オレも彼女を愛したい。だけど花崎さんや莉奈もオレを好いている。
日本では複数婚は禁止されており、妹と付き合うことも許されない。
しかしながらオレが誰かを選んだとしても、残りの二人が自分の欲を押し出し、反発してくることは容易に想像がつく。現にオレを巡って怜と橘さんが体育祭で決着をつけると意気込んでいる始末であり、妹もオレを独り占めするために、手段を選ばない可能性は高い。
それならばいっそ、全員と付き合い、全員を愛するしかないのではないか。
オレは他に選択肢が浮かばないのを良いことに、傲慢にもそんなことを考え始めていた。
食事を終えると、オレは自室に戻りスマホを手に取る。そこには先ほどまで連絡を取り合っていた花崎さんからのメッセージがあった。
『あんまり妹ちゃんとイチャイチャしないで。嫉妬で狂いそうになるから。お願いね』
短い文面だが、その内容には泥溜まりのごとき執念深さを感じさせる。
果たして体育祭の決着だけで納得するのだろうか。とてもそうは思えない程の心の闇が垣間見えた気がする。
妹への依存度が高すぎる彼女には、もう少し優しく接してあげないとダメかもしれない。
オレは返信を打つために指を動かし始めた。
「お兄様、失礼しますね」
コンコンというノックの音と共に、ドアが開く。
妹はオレの部屋に入ると、すぐにベッドに腰掛け、隣に座るよう促してきた。
「ねぇ、お兄様。今日は何をして欲しいですか?」
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