第2話 写楽

 第二話 写楽

   2022年 5月14日

 V.1.1

 平栗雅人


 名画鑑賞のお時間です。


 Wikipediaの解説によると、

 東洲斎写楽(生没年不詳)とは、江戸時代中期の浮世絵師。

 寛政6年(1794年)5月から翌年の1月という、きわめて短い期間内に、役者絵その他の作品を版行したのち、忽然と姿を消した謎の絵師。その出自や経歴については様々な研究がなされてきたが、実際には、その正体は明らかになっていない。


 その画風の特徴

 寛政6年5月に刊行された写楽のデビュー作である、28枚の役者絵の特徴として、

 ○ デフォルメを駆使し

 ○ 目の皺や鷲鼻、受け口など顔の特徴を誇張し

 ○ その役者が持つ個性を大胆かつ巧みに描き

 ○ また表情やポーズもダイナミックに描いた


 *デフォルメ:絵画や彫刻等で、対象や素材の自然な形態を意識的に変形すること。歪形、deformation。


 また、写楽の版画すべての作品に通じる特徴として、

 ○ 美化を捨象した面貌表現

 ○ 人物の感情表現の的確さ

 ○ 絵の具の鮮麗さ配合の妙

 が見受けられる。


 それ故「それまでになかった、ユニークで個性的な作品として、強烈な印象を残さずにはおかない、等々。」

 以上、Wikipedia解説から抜粋。


 単に見た目の美しさ・きれいさをそのまま写生するのではなく「その役者が持つ個性を大胆かつ巧みに描き」、つまり、役者の内面までをも写し取ろうとする。目に見える現実の姿からその内面(心・性格)までをも写し取るからこそ、心から「楽」しむことができるという意味をこめて「写楽」という名前(雅号)にしたのでしょうか。


 この画風というか、物事の裏側を追求する姿勢(諷刺の精神)とも呼べるスタイルは、明治時代のポンチ絵に継承されたようです。


 → 「最後の浮世絵師」小林清親

 「彼が1877年(明治10年)から始めた「ポンチ絵」は、のちの漫画の原点と云われており、明治時代に描かれた滑稽、諷刺的な描写が特徴の浮世絵です。

 特に、1883年(明治15年)に刊行した「三十二相追加百面相」と云う木版画は、ユーモアと風刺が入り混じったきわめて個性的な作品です。」

「最後の浮世絵師 耳(ミミ)とチャッピの布団 - 楽天ブログ」から

(https://plaza.rakuten.co.jp/pogacsa/diary/202108030000/comment/write/)




 さて、ここで青学のいくつかの作品(写真)中、

 最も「写楽っている」作品といえば、これではないでしょうか。

 https://ameblo.jp/aoken-wakiwaki/entry-12734460197.html

 卒業式

 2022-03-29 00:01:03


https://stat.ameba.jp/user_images/20220329/09/aoken-wakiwaki/7a/9a/j/o1080081015094617121.jpg?cat=512


 女性だけの集合写真(卒業生3名と在校生4人)

 どの方か、わかりますね。

 普通にスマイルしていれば、他の皆さんと同じ「美しい・可愛らしい」で済むものを、あえて「写楽」されています。

(前列左端の女性が目を瞑っているのは、偶然でしょう)。

 

 つまり、この写楽さんは

 ○ デフォルメを駆使し

 ○ 美化を捨象した面貌表現

 によって、ただの美しい卒業記念写真が一味違う、印象的な絵(写真)にしていらっしゃるわけです。

 ただ、Wikipediaの解説にあるように「その個性的な表情は強烈な印象を残さずにはおかない」ので、本来主役であるはずの後ろのお三方以上に目立っています。


 こちらから見て、前列いちばん左の女性は「無の境地」であり、次が写楽、その右隣は思いっきりはにかんだストレートな笑顔、そして最後の女性は「まったり感」漂うスローな笑顔、ときれいに流れができています。

 つまり、何もない無からいきなりダイナミックな表情となり、次に一転してこぼれる様な笑顔で「卒業記念写真という本来の場」に戻し、最後は緩やかに収める。

「起承転結」というよりも「起転承結」でまとまった、ということでしょうか。


 そして、後列の艶(あで)やかな三美人ですが、こちらの方々も写楽されています。

 ○ 「人物の感情表現の的確さ」

「モコちゃん」 → 「去年の九月の時点で18単位引っかかっていた単位を無事取ったぜ。どないや !」という、いわゆる「ドヤ顔」。

「桃香さん」 → 「2021年度の関東女子の女王やで !」という、これまた控えめなドヤ顔でしょうか。


 ○ 「絵の具の鮮麗さ配合の妙」

 これまた「桃香さん」のド派手な衣装は、まさに「鮮麗さ配合の妙」、4年間の拳法ライフの自信を表現しているのでしょうか。


 そして、「マネの仕事の速さは光速」と詠われた「爲ちゃん」こと、爲本さんの絶妙フォルム。

 この方は在学中、モデルのアルバイトでもされていたのでしょうか。着物の柄(青学なので青ベース?)といい、着こなしといい、首の傾き加減といい、中段の構えっぽい斜めに構えた姿勢といい、卒業証書の持ち方といい、プロ顔負けの姿かたちからは、他のお二人と同じく内面的な自信がみなぎっています。




 ついでに、全員で撮った卒業記念写真の方には、彼らの「距離感」がよく現れています。


https://stat.ameba.jp/user_images/20220329/09/aoken-wakiwaki/a2/96/j/o1080081015094617115.jpg?cat=512


 2021年度キャプテン佐藤氏が、その最後のブログで語られたように、彼の同期たちは曲者(個性の強いキャラクター)ばかりなので、この写真では各人、心持ち距離を置いて並んでいるように見えます。

 個性が強い者(プラス)同士だと、(無意識に)反発して距離が空いてしまうのかもしれません。別に仲が悪いというわけではなく、これが青学拳法部流の人的距離・対人スタンスの取り方なのでしょうか。


 ちなみに、同じ時期に撮影された早稲田の卒業写真と比べてみると、青学と早稲田の違い ? がよくわかります。

 早稲田の方は、卒業生も在校生たちも、まるでミツバチかスズメバチの(巣の中の)ように、密集している。

 早稲田も個性の強い人ばかりなのかもしれませんが、なにせ「One for All, All for One」がキャッチフレーズの集団ですから、普段は強力に牽制し合うが、いつでもスイッチを切り替え、ドラスティックに素早く密集するというリズムなのでしょうか。


 早稲田

 卒業式

 https://stat.ameba.jp/user_images/20220327/20/wasedanikken/77/4f/j/o1080081015093903938.jpg?cat=512


 密集

 https://ameblo.jp/wasedanikken/image-12715193503-15045045157.html


 密集2

 https://stat.ameba.jp/user_images/20211125/00/wasedanikken/d6/a2/j/o1080081015036707926.jpg?cat=512



 では、青学とは同期同士疎遠なのか、といえばとんでもない。

 下の写真は、佐藤主将たちが卒業して間もない、今年の5月4日、青学で行われた練習にOBとして参加した時の集合写真ですが、「モコちゃん」以外、全員参加している。驚くべきは、元マネージャー爲本さんまで参集している。いかに「チーム佐藤」が、いざとなればいつでも「拳法部のために密集できる」組織体なのかを物語っているではないですか。


 「修行前・修行後」

https://stat.ameba.jp/user_images/20220505/21/aoken-wakiwaki/f9/c8/j/o1080081015113367074.jpg?caw=800


https://stat.ameba.jp/user_images/20220505/21/aoken-wakiwaki/4b/4e/j/o1080081015113367079.jpg?caw=800


 https://ameblo.jp/aoken-wakiwaki/image-12741177787-15113367074.html


 もう一つ興味深いのは、前列左端の白帯の男性と、後列右端奥の黒帯(4段のOB)男性の対比です。

「白帯」の方は、なにやらやたらとポーズをつけて騒がしい。一方、

「黒帯」の方(かた)は、さすが4段、背筋が伸びているという点で美しいし、ただ立っているだけで存在感にあふれています。


 立教大学日本拳法部の2021年度キャプテンの最後のブログ(https://ameblo.jp/rikkyo-kempo/entry-12712966333.html)2021年11月29日で、「高橋キャプテンが1年生のときに当時4年生の新井さんと撮影したツーショット写真」と、その3年後「4年生の高橋さんが、OBになられた新井さんと再び同じポーズで撮ったツーショット」という、二枚の写真が掲載されていますが、それを思い起こさせてくれます。

 この二枚とは、一年生の高橋さんが4年生から教えてもらったことを後輩に伝え続け、新井さんと同じように伝統をつなげて卒業していく、という「立教大学日本拳法部伝統の継承」を伝える(証拠)写真 ? です。


 青学のこの写真ですが、今はまだ、ポーズをつけないとサマにならない白帯君も4年生になれば、宮本武蔵が「五輪書」で述べた「いわおの身」となり、後列の黒帯氏のように、黙っていても存在感のある漢(おとこ)になることを期待しましょう。

(あんたの所為で、爲本さんの顔が見えないではないか !という、この写真をご覧になる男性諸氏の苦情はこの際、置いておいて。)


 尚、このブログを書かれた「2年の永塚」さんという方は、

 ○ 「山田ではなく桃香と呼ばれたい」と、ずいぶん前に、彼女の同期の方がそれとなくブログに書いていたことをよく記憶し、今回も彼女の気持ちを察し、他のOB諸氏は名字で表記しているのに、ちゃんと「桃香先輩」としています。

 ○ また、「為本」ではなく「爲本」の表記も、永塚さんの正確な性格がよく表れています。編集者向きの方ですね。

以上

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名画鑑賞 @MasatoHiraguri

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