第3話 『歓迎会!のその後で』
ようこそ演劇サークルへ ~大学で冴えない俺が演劇サークルに出会って人生変わった話~
第3話『歓迎会!のその後で』
作 えりんぎ♂
【井上の家】
全員「かんぱーい!」
井上「というわけで、吉田くん!改めてようこそ演劇サークルへ!」
吉田「ど、どうも…」
井上の家では晴れて演劇サークルに加入した吉田の歓迎会として、飲み会が行われていた。
吉田「(飲み会…去年、学部の新歓とかはあったけどなんか怖いし、お酒飲めないし、参加しなかった。つまり俺にとって、これはほぼ初めての飲み会…!!いや、そもそも飲み会どころかこうやって同じ年ぐらいの人達と集まってご飯を食べたこともほとんどない…唯一記憶があるのは高校でのクラス会。クラスのほとんどの人が参加するという事で空気を読んで参加したのだが、クラス内で特に仲のいい奴もいなかった俺は…うっ、思い出すだけで気分が…)」
井上「吉田くん?顔色悪いような気がするけど大丈夫?」
吉田「あ!いや!大丈夫です!…あの~、飲み会って何すればいいんですかね?」
井上「え?何って…」
福島「そんなもん、飲んで食う以外あらへんやろ?」
福島はビール片手に吉田の隣に座る。
福島「吉田くん2年生やったんやね?」
吉田「あ、すいません、1年生じゃなくて…」
吉田康太。日本学教総合大学、経済学部2年。誕生日が来ているので20歳、20歳なので法律上お酒が飲める。
福島「ええねん!ええねん!1年でも2年でも、入ってくれただけで御の字やで!」
間島「僕も2年生だから同期だね!2年生同士仲良くやろう!」
間島は烏龍茶を飲んでいる。
川村「あたしも2年だ。よろしくな」
川村はコークハイを飲んでいる。
福島「そして、ウチは3年や!…って、ちゃんと自己紹介しとらんかったわ!ヒロ!自己紹介!」
井上「あー確かに、ちゃんとはしてなかったね。じゃあ僕から、僕は井上博人(いのうえひろひと)、教育学部の3年生でこのサークルの部長。趣味はそうだね、舞台とか映画の鑑賞。こんな感じでいいかな?」
福島「ええんやない?」
間島「じゃあ、次は僕!僕は間島真(まじままこと)!教育学部2年!趣味は筋トレ!将来の夢はヒーローになる事!」
吉田「ヒーロー?」
間島「そう!人に勇気と希望を与えるような、そんなヒーローみたいな人を目指しているんだ!」
吉田「…なんか、すごいですね」
間島「すごい!?そうか僕は凄いのか‥!!」
福岡「じゃあ次はウチやな!ウチは福島(ふくしま)しおり!吉田くんと同じ経済学部3年でヒロとは幼馴染!特技は利き飴ちゃんや!」
吉田「利き…なんていいました?」
福島「利き飴ちゃん」
吉田「利き飴ちゃん?」
福島「せや、ウチのおすすめの『グルメ堂』の『グルメキャンディ』は、全5000種類以上の味のバリエーションがある!…ウチはそれを一舐めでその味が何味が当てることができるんや!」
吉田「へ、へえ」
川村「しょーもないよな」
福島「おい!」
井上「えっと、それじゃあ、あとは…」
井上が川村を見る。
川村「…あ~、あたしは川村(かわむら)あかね教育学部2年、趣味はまあ、ゲーム?あとは…特にないな…」
間島「…え?終わりかい?」
川村「わかってねえな、これくらいの方が深みが出るんだよ」
間島「深み!?…そんなのがあるのか…!」
井上「あと、今日は来てないけどまだ他の子がいるんだ。また来た時に紹介するね」
吉田「あ、はい」
福島「ちゅうか吉田くん、さっきから全然飲んでへんけど下戸やった?」
吉田「ゲコ?」
福島「あぁ、お酒が飲めへん人の事を下戸っていうんや」
吉田「なるほど、ゲコ」
井上「ごめん吉田くん、お酒苦手だったかな?」
吉田「あ、いや、苦手…どうですかね…」
吉田、手元にあるカシスオレンジを見る。
吉田「(お酒、20歳になったのはつい最近の話だ。20歳の誕生日にウキウキでビールを買って飲もうとしたのだがあまりの不味さに吐いた、それ以来お酒を飲んでない。果たして俺はお酒が飲めるのだろうか?この、カシスオレンジ?とやらは不味くないのだろうか?)」
吉田「あの~、このカシスオレンジってのは飲みやすいお酒なんですか?」
井上「まあ、カクテルだから比較的飲みやすい方だと思うよ?」
吉田「カクテル!?(これが!?あのBarでシャーってやる、あのカクテル!?)って、飲みやすいんですか?」
福島「まあ、甘いから甘いの苦手やないんやったら飲みやすいと思うで?」
吉田「甘い?(カクテルって甘いのか?)」
井上「無理に飲む必要はないよ?お酒以外もあるしね」
吉田「い、いえ、せっかくですから試してみます」
そう言って吉田はカシスオレンジを手に取った。
≪30分後≫
吉田「だから、俺には何もないんれすう!!」
吉田は完全に出来上がっていた。
間島「吉田くん落ち着いて!」
吉田「いいれすよね!間島さんは!なんかヒーローになるとかカッコイイ夢があってぇ!」
間島「カッコイイ!?いや、確かにカッコいかも?いや、カッコイイな!!」
吉田「このブルドックてあんですか?面白い名前れすね?犬みてえ」
吉田は新しい缶を開けようとする。
間島「あー!ダメだ!吉田くん!それ以上はいけない!」
吉田「なんでれすか!?おいしいじゃないれすか!?」
間島は吉田を止めようと頑張っている。
井上「…吉田くん、そんなに飲んでたかな?」
井上は酔いつぶれて寝ている福島に毛布を掛ける。
川村「1.5缶ぐらいだな」
井上「僕、袋取ってくるね。川村さんも吉田くんをお願い」
井上はキッチンに向かった。
川村「ふっ、まさか、あたしが介抱する側になるとはな」
吉田「俺はダメ人間なんれすー!!」
間島「吉田くん!落ち着けぇ!」
間島は吉田にスリーパーホールドをかけて動きを止める。
吉田「あががが」
川村「よくやった間島!そのまま抑えてろ!ほら、吉田水を飲め」
川村はコップに入っている液体を吉田に飲ませる。
吉「うぐ、ん…」
間「…あ!不味い!!それさっき部長が焼酎入れてたコップ…!!」
川「え?」
吉「うっ…」
井「とりあえず、袋持って来たよ」
吉「おげえぇぇぇぇ!!」
吉田は吐いた。
間・井・川「あ゛あ゛-!!」
お酒を飲むと吐く、初めての飲み会で吉田はその事を知った…。
【駅のホーム】
飲み会で盛大に吐いた吉田は、駅のホームのベンチに座ってうなだれていた。
ベンチのすぐ横にある自販機では川村が飲み物を買っている。
吉田「(うう、まだ若干気持ち悪い)」
川村「ほら、やるよ」
川村は自販機で買った缶コーラを吉田に渡した。
吉田「え?いいんですか?」
川村「ああ、スッキリするぜ」
川村は吉田の隣に腰かける。
吉田「ありがとうございます」
川村「いいってことよ」
吉田は川村から受けとったコーラを飲む。
吉田「…いつもより美味しい気がする」
川村「だろ?」
吉田「…すいません、皆さんに迷惑かけてしまって…」
川村「気にすんな。最初はあんなもんだ…あたしも去年はやらかしてた。そのうち自分のペースで飲めるようになるさ」
吉田「…去年?…川村さんって2年生だから俺と同じ20歳ですよね?」
川村「あ?あ~実はあたし、浪人してるから歳はおまえより1つ上だな」
吉田「え?そうなんですか?」
川村「そ、同期だけど人生の先輩な」
吉田「…人生の先輩」
川村「だからちゃんと敬えよ?」
吉田「あ、はい、すいません…」
川村「…真面目に受け取んなよ」
吉田「え?す、すいません」
川村「いや、別に謝る必要はねえけど」
吉田「あ、すいません、あ…」
川村「ふっ、面白いなおまえ」
吉田「そ、そうですかね…?」
川村は自分の分のコーラを飲む。
吉田もそれに習い自分のコーラを飲んだ。
その後2人の間に少し沈黙が続いた。
吉田「(きまずい…)」
川村「…そういえばさ…おまえ、なんで変わりたいって思ったんだ?」
吉田「え?」
川村「昼間、今の自分から変わりたいって言ってたろ?」
吉田『…変わりたかったんです』
吉田「…あ、えっと…それは…」
川村「まあ、話したくないんだったら無理に話さなくていいけど」
吉田「いや、そういうわけじゃないんですけど…その、面白くないですよ?」
川村「大丈夫、あたし割と聞き上手だから」
川村はニッと笑う。
吉田「…わかりました。話しますけど、本当に面白くないですからね?」
川村「おう」
吉田「…その、最近、自分に何もない事に気づいたんです」
川村「何もない?」
吉田「将来の夢とか目標とか、やりたい事とかやれる事か…そういった、なんていうか自分っていうものがなにもないなって…」
川村「なるほど」
吉田「でも、それもなるべくしてなったていうか…。俺は今まで何もしてこなかったんです。小中高も部活とか他の事とか、なんか適当に理由付けて自分から何かする事から逃げて、何もやってこなかった…だから、そんな風に逃げてきた俺に、今更やりたい事とか将来の夢とか考えても、そんなのある筈が無かったんです」
川村「ふんふん」
吉田「そう考えたときに、このままだとこの先の自分の人生が空虚な物になるんじゃないかって思って…それは嫌だから、何か変わらないとって、それで…その…何か始めようって思いまして…」
川村「なるほど、で?なんでウチのサークルなんだ?」
吉田「それは…、友達が勧めてくれて、最初は演劇とか興味なかったのであまり乗り気じゃなかったんですけど…見学に行ってみたら…その…」
川村「…あ~、ワリぃ、なんか強引に入る流れにしちまったな」
吉田「いえ!全然そんな!強引だなんて!見学の時の川村さん達の演技は凄くカッコよかったし!俺もあんな風になりたいと思ったし!ああ言ってもらって凄く嬉しかったです!」
川村「お、おう」
吉田「…ッ!!」
吉田は、顔を赤らめ少し伏せた。
吉田「…すいません。なんか…」
川村「あ~、いや、まあ、そう思ってくれてるんだったら良かったよ。…しかし、カッコよかったねぇ、そんなカッコよかったか?」
吉田「…カッコよかったと思います」
川村「ふぅん」
川村はコーラを飲む。
川村「正直、ウチに入ってもおまえのいう自分?って奴が見つかるかどうかはわかんねぇぞ?」
吉田「え?」
川村「あたしたちも将来の夢とか目標が具体的に決まってる訳でもないし、自分が何者かなんてわかんないしな」
吉田「そうなんですか?」
川村「20歳やそこらで自分が何者かなんて分かるわけないだろ?人生ってのは、その何倍もあるんだぜ?」
吉田「…なるほど」
川村「まぁでも、新しくサークル入るっていうんだったら、何か変化はあるかも…いや、既に少し変われたんじゃねえか?」
吉田「え?」
川村「ウチに入ったって事は、少なくとも今までの何もしてこなかったおまえから変わったって事だろ?」
吉田「…あ…」
タンクトップ2『大事なのは前へ進む意思!その気持ちが小さい変化をもたらしていき!その積み重ねが理想の自分を作り上げていくのだ!』
吉田「(…そっか、俺、少し変われたんだ…)」
川村「じゃあとりあえず、まずは変われたって事と、これからに期待って事で」
川村は自らの缶コーラを吉田に差し出す。
吉田「?」
川村「乾杯!」
コツンッ
川村は自らの缶コーラを吉田の持っている缶コーラにコツンと当て、微笑んだ。
吉田「…!」
そして川村はそのままコーラを飲んだ。
吉田は缶コーラを持ったまま呆然としている。
吉田「………」
川村「ん?どうかしたか?」
吉田「い、いえ!何にも!」
吉田も慌てて、コーラを飲む。
吉田「がぼォ!」
焦った吉田は思いっきりむせてしまった。
吉田「ゲホッグぅッゲヘッ!」
川村「おいおい、大丈夫かよ?」
川村は、バックからタオルを出す。
吉田「あ!いや!大丈夫です!」
川村「いや!ビチャビチャじゃねか!いいから、ほら」
川村はそう言って、吉田を拭く。
吉田「…」
川村「まあ、これでいいか」
吉田「あ、ありがとうございます…あの、タオル…」
川村「いいよいいよ、気にすんな」
川村はタオルを鞄にしまった。
吉田「……」
~♪
駅のホームに接近放送が流れる。
アナウンス『まもなく1番線に電車が参ります』
川村「おっ、来たな」
吉田「え?川村さんも?俺もこれです」
川村「そうなん?最寄りは?」
吉田「え?ああ、‥えっと川〇駅です」
川村「川〇駅?埼玉の?」
吉田「はい」
川村「マジ?」
吉田「マジですけど?」
川村「あたしも最寄り川〇」
吉田「え?マジですか?」
川村「マジマジ。マジか~、同じ最寄りか~」
吉田「へ、へぇ、こんな偶然あるんですねぇ」
川村「それな、でも良かったぜ」
吉田「良かった?」
川村「サークル帰りに一緒の方向の奴いなかったからさ~、次から退屈しなくって済みそうだ」
吉田「え?」
川村「じゃあ、これから帰りもよろしくな吉田!」
川村はそういうとニカッと笑った。
吉田「……よろしくおねがいします」
駅のホームに電車が到着した。
■登場人物
吉田康太(よしだこうた)…大学2年生。身長は170cmないくらい。髪の長さは長すぎず短すぎず。外を歩いているとよく知らない人に道を聞かれる。
川村(かわむら)あかね…大学2年生。身長は160前半。金髪プリンショートポニテ。小麦色の日焼け肌。学校や近所を徘徊するときはジャージかパーカー。
間島真(まじままこと)…大学2年生。身長は180前半。すっきりしたスポーツ刈り。黒ぶちの四角い眼鏡を愛用。ベンチプレス150kg挑戦中。
福島(ふくしま)しおり…大学3年生。身長は140前半。前髪ぱっつんショートヘア―。年齢確認率100%。
井上博人(いのうえひろひと)…大学3年生。身長は170前半。茶髪のミディアムショート。特技は後方保護者面。
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