僕は男の娘だから―――。
@yuki_toya
プロローグ①
僕は……自分が大嫌いだ……。
小学生の頃。僕は普通に学校生活を送っていた。真面目に授業を受け、休み時間や放課後は友達とがむしゃらに遊んだり、時には喧嘩したりととにかく何も考えず無邪気に過ごしていた。
そして時は経ち、小学五年生頃。僕たちは少しづつ成長していった。それぞれが自分の意思を持つようになったのである。つまり、自分の考えを持ち、それに沿って自ら行動することが出来るようになったのだ。
それは世間一般的にはとても良いことなのだろう。なんせ大人に近づいている証拠なのだから。
だが……その成長は僕にとってあまりにも不快なものだった―――。
自分の意思を持つというのは全部がいい事づくめな訳では無い。仮にも小学生のため、成長したと言ってもまだ発展途中、自分で思ったことや感じたことをありのまま口に出してしまう。つまりは意志を持ったことにより誰かを傷つけることに繋がってしまうのである。そしてそれは、時に自分でさえも自ら傷つけることとなってしまうのだ。
その結果、それがいじめなどの原因に繋がってしまう。そして、いじめられた側の人間はいじめた側の人間同様に意志を持ち始めているため、それを過度に受け止めてしまうのだ。それ故に、おのずと被害者を生み出してしまう。
そう、まさに僕みたいな人間のことだ。
僕はこの頃からこの見た目のせいで女子から嫌がらせを受け、男子にはからかわれ、挙句の果てには普通の日常生活でさえ生きづらくなってしまった。
全てはこれが原因なのだろう。
そう、僕は男でありながらそれを感じさせないほどに女の子のような見た目をしている。
そんなこの姿を世間一般からはこう呼ばれているらしい。
僕は『男の娘』なのである。
もう一度言いたい。僕はそんな自分が大嫌いだ……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キーンコーンカーンコーン。
六時間目の授業の終わるチャイムが学校中に鳴り響いた。そして、先生は学級員に終わりの挨拶をするよう呼びかける。
「起立!気をつけ!礼!」
学級員がそう言うとクラス全員で「ありがとうございました!」といつものように言い、授業を終えた。
先生が教室を出ていくと、周りは完全に脱力状態となり、友達と喋りだしたり、トイレに行くために席を立ったりなどそれぞれがそれぞれの行動を取り始める。
僕も僕で学校に持ってきた本を開き、本を読み始めることにした。
読み始めてから数分したとき、担任の先生が教室にやってきた為、本を閉じ、机の中にしまった。その後、担任の注意もあってか周りも静かになり、やっとのこと帰りのホームルームが始まった。ホームルームの内容はいつも通り、雑談やら連絡やらと先生が喋っている内容を聞くだけの単純作業である。
だが、今回はいつもよりもやや話が長く中途半端に耳を傾けていると、微かに『文化祭』という単語が聞こえてきた。
それを聞いた途端、僕は完全に聞く耳を閉じた。
それから数分経った後、ホームルームが終了し、学校という名の地獄から開放された。
もう、この後は帰るだけ。
と、ここまでがいつも通りの通常運転であるが、今日に限ってはそうではなかった。部活である。
この学校では必ず部活に入らなければ行けないという校則がある。そのためこの学校に帰宅部は存在しないのだ。まさに校則に拘束されてるわけである。
部活について僕は運動神経が良いためか運動部によく誘われるのだが、あいにく学校で疲れている上に運動など断固拒否!そのため僕はある文化部に所属している。
「おーい!玲!サッカー部入ってくれよ〜」
そうそう、まさにこんな感じで勧誘を―――
「って!何度も言ってるけど無理です!」
「僕は運動部に入る気はありませんから!」
毎日毎日、こんな感じで誘われ続けている。正直そろそろやめて欲しい。
とまぁ、そんな勧誘もいつものように華麗に断り、ささっと教室から出た。
ここから向かう先は僕の所属している部活。名前はなんだったかな?たしか、『情報文化運動国際天文部』略して『天文部』。
天文部以外は必要かは分からないけど、とりあえずそのなんちゃって天文部に僕は入っている。この天文部は教室のある校舎とは反対側の校舎の最上階角部屋というなんとも言えない場所にある。最上階のため階段を登らないといけないのが少し残念なところ。
なぜ、そんな部活に入ったのかは色々とあるが、そうこうしているうちに部室に到着した。
まぁ、着いたのは良いのだが、何故か扉の向こうからすごい音がきこえるんですけど……。開けるのがとても怖い。だが、開ける以外に選択肢がない。
恐怖心に侵されながらも恐る恐るゆっくりと扉を開けると―――。
「うおりゃぁぁぁぁぁ!」
空いた扉からなんということでしょう。1人の少女がこちらに剣を向けて走ってきてるではありませんか。フラグ回収バッチリ。
「うわぁぁぁぁ!」
「あっ……」
遅かった。遅いと言うよりは避けられなかっただけですけど……。これはどう言う状況なのでしょうか。
「ちょっと部長!大丈夫ですか!?ってはあぁぁぁぁ!」
少女が飛び出してきた部屋の中から、もう1人別の少女が慌てて飛び出してきた。何やらとても驚いてるみたいだ。
「あんた……なにしてんのよ……」
驚くのも無理はない。だって今の状況、僕が少女に押し倒されている状態なのだから。
「これは事故ですからね……」
事故というのは事実であり、なにと聞いた少女もそれについては分かってはいるため、特に怒っている訳ではなくただただ驚いているだけだった。
とそれはいいんだけど……。それよりも……。
「先輩!早くどいて下さい!!」
「ごみぇーん……」
僕は男の娘だから―――。 @yuki_toya
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