第38話 夏の嵐
青空が見える此の街から走り出せば
灰色の狼が覆い尽くしているような
山の頂が見える
降らなければ良いがと思うが
山の天気の変わりようは
悪戯な子供のように
笑っては大泣きする
ほんの少し雨粒が落ちたかと思うと
まるでダムが決壊したかのように
空を流れる水になる
アスファルトを叩きつける雨
跳ね上げられた水飛沫が強い風に吹かれて
煙のように宙を舞う
水を滴らせる衣服は
体の熱を吸い取り
此の暑い季節に寒さを感じる
真昼時の暗い空の下で
一瞬の閃光が辺りを照らすと同時に
轟音が波動となって体で感じる
すぐそばに落ちたよう
峠を越えるに数十分あれば
たったそれだけの距離
通り過ぎた雨を背に感じれば
早々に野鳥の声を聞く
少し明るくなった空の下
体の震えだけは止まらず
夏の嵐は悪い夢のように去っていく
峠を越えて山裾の村から見た空は
青いキャンパスに描かれた白
稲光よりも強く太陽が照らす雲が
真白に輝いて見えていた
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