第34話 紅谷間



赤い谷間

土で固められた土間の片隅で

薪を入れて米を炊いた日々


大きな鉄の釜から湯気が吹き出し

遊び疲れた少年の日々

どれほど夕食を待ち侘びたであろうか


作物の収穫も終わり

蓮花の花が咲く間も与えず

走り回った湿地帯


大人達は子供を叱ることもなく

共有した時間とは


少年が投げる白球を

大人気なくバットを力の限りで振り切り

それを追いかけては追いつけず

追いついて皮のミットで白いボールを掴んだならば

悔しいのか良くやったと言いたいのか

苦笑している農夫達


山の谷間から

赤く燃える月が微笑みだす時間


真夏の太陽が沈みゆく時間

忘れることができない時の永遠と言える過去は


山間から聞こえる

幻のように失われていく消えない思い

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