第32話 夏に流れる



真っ青な空

入道雲が地平線から首をもたげ

青と白の世界が広がる

美しい夏の空


でも

そこへ

灰色に縁取られた

黒い雲が迫ってくる


この雷をも伴って来る

この黒い雲は誰にも嫌がられて


青に照らされた

真実の世界よ


それよりもその黒で

その真実よりも

隠したい嘘を

雷鳴と共に洗い流してくれるならば


信じたい

そんな空を覆う黒い雲よ


通り過ぎてゆく雨と雷鳴で

この身を

この嘘だらけの魂を洗う

夏の雷鳴と雨


私自身を

その存在さえも流すように

降り続けてほしい激しい銀色の雫


願いが

願いが叶うならば

全ての願いが叶う真昼の空の轟音と光へ


焼き尽くしてほしい

今立っている大地から大海原へと

この私を流してほしい

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