第30話 雨

雨の中


降り出した雨が街並みを洗う


湿った空気が南から流れていたのは知っていたが


不意打ちをされたかのように

嫌がって走る2輪にげきを飛ばす


Uの字を書くようにターンして

街から町へと帰る戻り道


ヘルメットを叩く雨粒の音が

痛いと叫ぶ音に似る


夏だというのに

雨水が滴るほどに濡れたシャツとジーンズで

風に体当たりしながら走り続ければ

既に身体は冷え切り

気を失いそうになるアスファルトの上での信号待ち

此処で目をつむると眠ってしまいそうになる横断歩道の前で


遥か向こうのビルの谷間に

稲光が落ちて

暗い空に一瞬の明るさを与える

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