第14話 明るい空



山の向こうから大きな音が聞こえる


空は暗くなり

やがて雨の音が聞こえ出す


しっかりと張ったテントの布を叩く雨


その時

突然に空間を引き裂くような音が聞こえる


雨に濡れないようにフロントシートを上げて

外の様子を伺う


昼過ぎの暗い空に光が走る


雨がテントの中に入らないよう

フロントシートのジッパーを下ろすと

自分の声も聞こえないくらいの

雨が布を叩く音に気付く


今度ははっきりと

テントの中にいても分かるくらいの閃光が空を走る


早い

雲の流れが早すぎる

あんなに遠くにいた雷雲らいうん

今は頭上に来ている


光と同時に雷鳴が轟く


風でテントが大きく震えた


雨の香りが

この小さな布張りの部屋に充満する


束の間の嵐


次第に外は明るくなり出し

雷鳴は遠く近くの様々な音となる


一体どうなっているのだろうと

小雨続く中

外へ出てみれば青い空が見え始めていた


嵐は突然に

局所に深い痛みを与え

過ぎて去って行くものだと分かっているのに


ここまで持って来てしまった強烈な心傷は

いつまで残るのかと


再び森の中でさえずりり始めた小鳥達と共に

大地にしっかり立って

小雨降る中で

顔を濡らしながら見上げた雲と雲の狭間


明るくなり始めた広い空から

時折雷鳴が聞こえていた

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