第10話 走る事だけを生きる事と



陽気に誘われて

二輪のスロットルを回し

走り出せば陽も落ちて


行き先も分からぬままに

曲がり角を突き抜けて

風だけが自由とは何かを教えてくれたなら

長く伸びて行く道の向こうへ陽が落ちていく


星が教えてくれる道は

思案に暮れた真夜中の曲がり角

山の中の一軒だけある工場で

ポツンと光る自動販売機にコインを入れ

落ちてきた冷たい缶珈琲だけが私を慰めてくれる


そろそろ走ろうか

でも何処へ

帰るべき家も見失ったような夜の帷の中で


ヘッドライトが照らすアスファルトだけが道標となり


ハンドルを切ると

感覚だけが我が家を示す

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