第8話 遠い海



生きると言う事

そう容易いことでは無い

いつもそう思っているが

忘れられない思い出が

私を否定する


潮の香り

いつか来た海で

潮風に髪を靡かせ

渚に立っているあなたを見ていて

一瞬でも苦しみを忘れる事ができた日


生きる事の喜びは

忘れる事にあるのかと

押し寄せては引いて行く波のように

古き式たりは既に去り

新しい時がやって来る


歴史はいつも繰り返し

同じように見えるこの波のように

違う何かを運んで来ているに違いない


悲しむ必要など無かったのだ


生きる

そう難しいことでは無い

思い悩む前に

喜びを感じればいいの

あの日あなたは

そう言っていたよう

大きなサングラスに隠された瞳が笑っていた

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