第7話 南風



街で吹く風は

焼けたコンクリートに熱せられ

暑い日差しの中

更に身体をいぶすように通り過ぎていく


公園の木陰に休めば

木々の葉の裏から降り注ぐ緑のシャワー


そこへも容赦なく風が通り

束の間の休息に鞭を入れる


風よ

何を運んでくるのか

それは熱気だけではなく

何か他の狂気じみた蜃気楼


地面に浮かぶ自分の影さえも

私を嘲笑っているように思える


早く家に帰り

冷凍庫からジンを取り出し

グラスに注ごう


白く霜をつけた

ボンベイ・サファイヤの瓶が

更に私を笑うだろう

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