第二章 きっかけ

バタンとドアがしまり、圭君は出ていった。


私のつまらない一言が、圭君の心を曇らせたままで。

いつも後悔しながら、私は自分を責める。


大好きな彼がいなくなった私のアパートの部屋。

とても、広く感じた。


1DKのつましい部屋に。

圭君が訪れるようになったのは、半年前。


高校卒業から二年後の同窓会。

メアドを交換して、二人だけのラインが作られて。


私達は恋をした。


圭君の気持ちは。

正直、分かるとは言い切れる自信がない。


サッカー部のキャプテンで。

球技大会では、女の子達が黄色い声援送っていたんだもの。


地味子の私は、遠くから見るだけ。

でも、それだけで結構、満足してたんだ・・・。


だから、同窓会の後でメアド交換しないかと。

彼の言葉を素直に信じることは出来なかった。


着信を期待することが苦しくて。

三日間、引出しにスマホをしまっていた。


開けるのが怖くて。

ずっと、見ないふりしてたのに・・・。


三日後に引出しを開けてみたら。

着信アイコンがいっぱい。


恐る恐るメールを開いたら。

圭君のメッセージが続いていた。


只の文字なのに。

その明朝体が、私は大好きになった。


何度も何度も。

読み返す私の心は、幼子のように震えていた。


それが。

私と圭君が、御付き合いを始めるキッカケだった。


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