第一章 エスカレーターの美女

地下鉄の長いエスカレーターを降りていくと。

背の高い女の人が反対側からのレーンを昇ってくる。


まるで、モデルさんのよう。

カッコいい。


私の心に浮かんだ言葉そのままに。

男前な彼女を心底、羨ましいと思った。


私とは正反対。

私の身長は150㎝にも満たない。


いわゆる、チビだ。


「可愛くて、いいじゃん。」

友達は、そう言うけれど。


当人にとっては、もう少し。

背が欲しいなぁ、と思う。


だから、レーンの向こう側のモデルさんが。

私の方をキツイ眼差しで見つめたのが。


少し、へこんだ。

「何だかなぁ・・・。」と、あの人が呟いているようで。


でも、違うんです。

私が、目の前の彼をジッと見つめているのは。


大好きだから。

それも、あります。


エスカレーターを一段上から見つめているのは。

私の背が低いから。


そうしないと、同じ目線にならないから。

きっと、バカップルに見られたのだろうな。


外れてはいないけど。


私、彼、圭君のことが。

大好きなの。


エスカレーターの短い旅の途中でも。

見つめることをやめられなかった。


特に、今日は。

だから、皆様。


どうか、あきれずに。

私の物語の続きを読んでください。


どうか。

御願いします。


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