ファッションメンヘラは死ね
ファッションメンヘラは死ね
「もう嫌。私、死にたくて死にたくてたまらないの。何をやっても上手くいかないし、誰も私のことを助けてくれない。だから、もう死にたい」
真夜中のビルの屋上で、彼女は泣きながらそう叫んだ。
「そんなこと言わないで。でも、君が本当に辛いなら止めはしないよ。それなら、僕と一緒に死のう」
「合格」
彼女はそう言って、僕に向かって偉そうに拍手をした。
「私ね、死にたいって言って、『そんなこと言わないで。生きていれば、きっと幸せになれるよ』とか言って励ます人、嫌いなの。そんな綺麗事を言う人が。でも、あなたは私の痛みに寄り添って、一緒に死のうと言ってくれた。本当に嬉しい」
「え、じゃあ今のは演技ってこと?」
「うん、そうよ。私たち最近、マンネリ化してきたじゃない。だから、あなたと別れようと思ったんだけど、私と一緒に死んでくれるほど好きなら、やっぱりいいや」
「良かった。驚かさないでよ」
僕は、彼女を抱きしめ、やさしくキスをした。
「私たち、ずっと一緒よ」
「うん。もちろんだよ」
僕はそう言ったあと、彼女の背中を強く押した。彼女の体は、地面に落ちて、ドンという鈍い音を立てた。ああ、多分死んだな。そう思いながらも、僕はズボンのポケットからスマホを取り出し、119番に電話をかけた。
「彼女が…………彼女が、ビルが飛び降りてしまいました。お願いします。早く、早く来てください。説得したんですが、全然話を聞いてくれなくて」
僕は泣いたフリをしながら、救急にそう伝えた。そして住所を言い、電話を切った。それから、ジャケットの胸ポケットからタバコとライターを取り出して、1本タバコを吸った。煙がゆっくりと風に乗って流れていく。そして、吸い終わると、まだ燃えている吸い殻を地面に捨て、足でぐりぐりと踏み潰した。
「はぁ。僕、ファッションメンヘラは好きじゃないんだよなぁ。」
寂れたビルの上で、彼女の潰れた遺体を見下ろしながら、僕はぼそりと呟いた。
ファッションメンヘラは死ね @hanashiro_himeka
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