第2話
ぼくたちは日が暮れる前に、店の秘密を探ることにした。
本田さんよりも先に見つけようと春奈がぼくに囁いた。
無言の小松は少し塞ぎ気味だ。
この店は六階建てで、一つしかない階段が一階から六階まで伸びている。何度も改築した後だから地下もあるはずだ。後はエレベーターが数基ある。
「ねえ、徹底的にあの階段の周囲を調べましょうよ。きっと、古いし開業前に造られたはずだから、地下に通じる何かがあるはずよ。そこで、たくさんの行方不明者が煮えたぎった鍋に入れられているのよ。溶けて跡形もなくなる前に助け出さなくちゃ」
春奈はそう言うと、ニッコリ笑ってぼくの手と小松の手を引っ張りだした。
春奈が嬉しそうにはしゃいでいるから、客たちは微笑ましい目でぼくたちを見ている。
強引に引っ張る春奈は、まずは床を調べた。トントンと小さな手で階段の踊り場にある白黒の床を叩いたり、短めの髪を振りながら下へと降りる梯子などを探していると。
クリクリとした目で、ついに何かを見つけた。
小さな飾り窓のカラフルなガラスを外す。
ぼくと小松も、強い風を受けている殺風景な庭の中央に地下へと通じる階段が見えたのだ。
丁度、見えにくい木々の間にある。
ぼくたちは、買い物客に気付かれないように庭へと窓を這い出した。
「なあ、地下があるから、春奈の考えって結構当たっているんじゃないのか? おれ、実は怖くてすぐに帰りたいんだよな」
庭を歩く丸坊主の小松は蜘蛛の巣のある薄暗い地下まで、一足早く喜び勇んで階段を降りていく春奈を不安げに見つめていた。
地下にはやはり牢屋のような空間が壁に幾つも造られていた。
鉄格子が嵌められ、必要最小限の生活区域の牢屋には、浮かない顔の大人たちが6人もいた。
反対側の空間には大型テレビが設置され、複数の古い椅子がテレビに面して釘や針金で固定されていた。
牢屋の中の人たちは、ぼくたちに気が付くと小声で「助けてくれ。早く出してくれ」と懇願している。
「早くこの人たちを助け出さないと! 煮えたぎった鍋に放り込まれてしまうわ!」
春奈は心配して鍵を見つけようとした。
けれど、大型テレビ以外には椅子だけしかない。
鍵のありそうな場所は、この空間にはなかった。
その時、ぼくたちが降りて来た地上からの階段から足音が近づいてきた。
コツコツとした硬い靴の音が迫って来る。
「お願い。隠れて」
一人の中年女性がぼくと春奈に小声で警告した。
小松はビビッて大型テレビの後ろへと隠れた。
ぼくと春奈は慌てていたので、すぐさまお互いに同じ方向へと走り出して、二人でおでこをぶつけあう。
春奈の頭は以外に固かった。
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