第110話田中珈琲豆店でのケーキイベント(2)

再び、二階ホールの扉が開いた。

孝太を先頭に、全員が姿を現した。

数台のワゴンの上に、それぞれ大きな銀のカバーが乗っている。

ホールの中央で、孝太が挨拶。

「本日は、ようこそおいでいただきました」

「ただいまより、新作ケーキをお配りいたします」

「その名は、横浜に決めました」


孝太の言葉を受けて、テーブルの上に「新作ケーキ:横浜」が置かれ始める。


「うわ!きれい!」

「かっこいいなあ」

「お洒落な感じ」

「海、港、灯台・・・空を飛ぶカモメ?」

「水兵さんが歩いているわね、可愛い感じ」

「へえ・・・ゼラチンで?土台はチョコレートケーキですね」

「食べるのが惜しい程、芸術的で…エレガントで」

「孝太君、ますます、腕を上げたわね」


騒ぎがおさまらない中、孝太は再び声をかけた。

「是非、お口に入れて」


「これは・・・美食の極み・・・」

「甘過ぎず、するっと口に入る」

「でも、しっかりとコクがある」

「土台のチョコレートケーキとも、しっかり調和して」

「上のゼラチンケーキと美味しさを高め合うような」

「食べ飽きないわね、重たくないから」

「紅茶はダージリン?すごく合うよ」

「うーん・・・横浜限定だよね・・・」

「まさか、ローマでも作って欲しいの?」

「それは内緒にしようよ」

「孝太君たちが、ここの店を休むことになるでしょ?」

「そうか、私たちが、その間、食べられなくなると」


そんな大使夫妻たちの、笑顔や興奮を、官房長官、知事、市長たちは、満足そうに聞いている。


孝太が、再び、話しだす。

「この新作ケーキは、日本の御菓子、紅葉羊羹にヒントを得たもの」

「そのヒント、和菓子の心を、洋菓子に生かしてみました」

「この、開港の地、横浜に、ふさわしいかと思い、ケーキの名前も横浜に」


「うん、そのままがいいね」

「他に考えられない」

「しかし、きれいで、美味しかった」

「後味も、スッキリとして、まだ入るような」


大使夫妻たちの反応を見て、孝太は、頷く。

一呼吸して、また話す。

「この、洋菓子専門の柿崎孝太ですが、一つ、冒険をしてみました」

「準備をしてまいりますので、今しばらくお待ちください」


柿崎孝太は、再び頭を下げ、保だけを残して、全員が姿を消した。


官房長官は、「うん」と頷いて、県知事と市長に。

「なかなかやるね、孝太君、気に入ったよ」

県知事

「国の宝で、県の宝、当然、市もそうかな」

市長は苦笑

「それを言ったら、本気で拒否されました」

「まだ、営業初めて、間もないのにって」

「でも、いい男だよ、彼は、男気があるって感じかな」


市長の言葉に、官房長官、県知事も頷いている。

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