第101話日本外務省高村次官の厳しい言葉 意外なお方からの言葉

高村次官の厳しい言葉は、さらに続いた。

「パリのケーキコンペの優勝だか何だか知らないが、君は日本人の分際というものを知らないのかね」


孝太は、また機嫌が悪くなった。

「日本人の分際とは?」


高村次官の声に、とげとげしさが強くなる。

「そんなことも理解できず、配慮もできないのかね、人間として、日本人として失格だ、君は」

「いいか、パリのケーキコンペ、世界でもトップクラスのケーキコンペだ」

「何故、フランスに、パリの職人に花を持たせない?」


孝太はため息をつく。

「要するに、優勝しない程度に手を抜けと?」


高村次官は、声を大きくした。

「当たり前だ!アジアのチンケな日本人が世界最高のパリのケーキコンペで優勝したら、パリの職人は面目を失うに決まっているだろう!」

「審査が適正であろうと、どうだろうと、そんなのは関係ない」

「それが、日本人憎しにつながる可能性も高い」

「その責任をお前が取れるのか!」

「3位か、4位程度で、日本人もなかなかやる・・・程度にするのが、大人の職人だ、それが当たり前だ!」


孝太は不機嫌なまま。

「私は職人です、そんな味を落とすような、手抜き仕事はしません」

「審査は審査なので、優勝だろうと何だろうと、私がどうにもなることではないので」


高村次官と孝太の喧嘩腰の話は、平行線で終わった。


真奈が孝太の疲れ切った背中をトントンとつついた。

「保さんが話があるって」


孝太が、田中珈琲豆店に入って行くと、保が手招き。

「下らない役人に疲れただろう」


孝太

「はい、とにかく上から目線で、こっちの言うことなんて、何も聞かない」


「心配しなくていい」

「客の期待に沿うことが、店の仕事」


孝太

「はい」


田中珈琲豆店の電話が鳴った。

保が受け、受話器を。そのまま孝太へ。


孝太は首を傾げながらも、普通に電話に出た。

「はい、田中珈琲豆店です」


「私だ、外務省の高村が酷いことを言ったそうだね」

「昔、お世話になった保さんから聞いたよ」

「総理にも報告した、総理も高村にお怒りだ」

「今、大臣にも注意したよ」

「孝太君は、何も心配いらない」

「市長と知事にも、私から連絡した」


孝太は、本当に驚いた。

電話の相手は、官房長官だった。

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