第96話クイーンホテル本部の横暴(2)

「要するに、柿崎パン店と田中珈琲豆店の営業を妨害する行為でしょうか」

孝太は、田村支配人に質問。


田村支配人

「うーん・・・確定的なことは言えないが」

「指示は国外から出す」

「その上で、暴力的な行為、極道を使った妨害行為は・・・事例がある」

「指示者が国外なので、地元警察程度では逮捕に至らない」

「もともと、日本の警察は、外国、特に欧米には及び腰、弱腰だから、何も言えない、何もできない」

「例の自動車会社のトップの逃亡事件でも、わかるだろう」


孝太は首を傾げた。

「たかが、小さなパン屋のパン焼き職人に、そんな妨害を?」


田村支配人

「いや・・・孝太君・・・それは違う」

「今や、柿崎孝太のケーキ職人としての名前は、業界では、全世界に知れ渡っている」

「パリのコンペの優勝から始まって、例のケーキイベントの大成功でね」

「その柿崎孝太が、クイーンホテルを嫌がって、実家の小さなパン屋を継いだとも言われて」

「クイーンホテルのトップは、あちこちで批判され、笑われ、面子も失っているのさ」

「・・・金と面子には、徹底的にこだわる人だから」


孝太は、苦しい声。

「その金と面子にこだわる人が、かなり下に見下している東洋人にコケにされれば・・・ですか」


田村支配人

「その通り、特にヨーロッパの超上層階級になると、東洋人なんて、家畜に過ぎない」

「あるいは、金を貢がせるだけ、それが果たせなければ、廃棄処分さ」

「中国にはそれでも、遠慮するかな、報復もあるから」

「でも、日本なんて、何もしてこない」

「政府も馬鹿にされ切っているから」

「簡単に孝太君の首など、差し出すと、考えている」


孝太は、返事に苦慮した。

「そうなると・・・」

「あまり突っぱねても・・・」

「スタッフにも迷惑がかかると?」


田村支配人は言い切った。

「とにかく、それも含めて、今後のことも、よく考えて欲しい」


孝太は、「考慮します」と、言うしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る