第93話孝太と奈津美は、意気投合

孝太から、簡単な厨房の説明を受けた奈津美は、「使いやすそうな、これならどんなケーキも出来ますね」と満面の笑顔。


祥子は孝太の顔を見た。

「でも、孝太君は、パンの作業で、かなりのエネルギーを使ってから、ここに来て、ケーキを作るの」

「だから、定番のケーキ四種類に限定している」

「レアチーズとザッハトルテ、フランボワーズ、モンブランだけ」


美和も、祥子に続く。

「孝太君も、もっと手の込んだケーキも作りたいだろうけれど」

「体力的と時間的なこともあるし」

「深田美紀さんの手直しもあるから・・・」


孝太が「まあまあ」と二人を抑えると、奈津美が笑顔。

「私に任せてください、美紀さんのことも」

そして、話題を変えた。

「ところで孝太さん」

「例の大使館夫人のイベントで出したケーキのレシピ、教えて欲しいんですが」


孝太も笑顔に変わる。

「チョコレートケーキと、タルト・ア・ラ・プラリン、タルト・オ・リ、エーブレスキーバ、カッサータ」

「それと・・・紅葉羊羹かな」

「ああ、いいよ、そんなに難しくないから」


孝太からレシピノートを受け取った奈津美は、「ほお・・・」と息を吐く。

「この単純なレシピなんですけれど、孝太さんの一つ一つの手わざが完璧だから味が違うんです・・・」


その奈津美に、孝太が相談をかける。

「大使館夫人には日本のケーキ、との発想で紅葉羊羹にしたけれど」


奈津美は、その言葉の途中で、孝太の「意図」に気づいた。

「もしかして、孝太さん、ゼラチンを使って、紅葉羊羹を西洋風に?」


孝太は笑顔で、首を横に振る。

「いや、横浜風にと」


奈津美の顔が、素晴らしく輝いた。

「孝太さん!今から作りませんか?」

「私、パッとイメージがわきました!」


孝太は苦笑い、早速、材料やら道具を取り出し、揃えている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る