第90話新パティシエ松浦奈津美(2)

松浦奈津美は、5分後に、スクーターでやって来た。

小柄でショートカット、童顔で、キビキビとした感じ。

田中珈琲豆店に入るなり、

「松浦奈津美です!よろしくお願いします!」の挨拶の声も元気はつらつ。


思わず、孝太、祥子、美和の三人も笑ってしまうほど。


孝太

「横浜元町の老舗ケーキ屋さんの娘さんで、腕は俺が保証する」

奈津美は、顔を赤らめた。

「憧れの孝太さんに言われると、メチャ、ドキドキします」

祥子はニコニコ。

「元町のケーキ屋さん、私も何度も」

美和

「必ず旅行雑誌には載っていますよね、有名なケーキ屋さん」

奈津美は謙遜。

「いや、立地がそうなっているだけで」

祥子

「孝太君の弟子になりたかったの?」

奈津美は頷く。

「はい、それはもう・・・実はパリの時からお願いしていて」

孝太は苦笑。

「独立していなかったしね、それは難しい」

美和

「今回の弟子入り志願は・・・実家のご両親は?」

奈津美は、満面の笑顔。

「それは大賛成」

「一日でも早くと」

孝太

「それは、安心できるね」

「ご両親にも感謝しないと」

奈津美は、その孝太の顔をじっと見る。

「孝太さん、実は、私の実家の店に孝太さんのご先祖が」

「柿崎パン店から、明治の末頃、嫁に来ています」

孝太の目が丸くなった。

「・・・知らなかった・・・」

「遠縁?ご縁?」

祥子は苦笑。

「孝太君は、こういう人、家の歴史には疎い、無関心」

美和も笑う。

「真奈ちゃんも嘆いていたもの」

奈津美が、その「真奈」に反応。

「真奈ちゃんとは、実は高校で同じ美術クラブ」

「私が2年先輩になります」

祥子は、さっそく真奈を呼び出している。

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