第85話父の葬儀 孝太の挨拶
父の葬儀会場となった教会には、孝太と真奈の想像を超える葬列者が訪れた。
父と母の親戚は当然として、商店街、町内会の主だった人、赤坂クイーンホテルからは支配人、松田パテシィエ長、外務大臣、官房長官、フランス、ベルギー、デンマーク、イタリアからは大使夫妻、それと父のパンを愛し、柿崎パン店と田中珈琲豆店を愛して来た長年のお得意様たちが、まさに「列」をなして、父の棺に献花をした。
孝太と真奈は、挨拶で忙しいので、田中保と祥子も、孝太と真奈に張り付いて、葬列客への挨拶の手伝い。
また、美和と美和の父(元赤坂クイーンホテル支配人)が、手際よく列を整理、ヴィヴィアン、アラン、ミシェル、深田美紀も受付などで、葬儀を手伝った。
神父の祈祷など、全ての葬儀が終わり、施主として孝太が挨拶に立った。
「本日は、父の葬儀に、これほどのご参列、誠にありがとうございます」
「天国に旅立った父も、ありがたく、皆様の御心を受け止めていると思います」
「私の父は、その父、つまり私と真奈の祖父から、柿崎パン店を引き継ぎ、皆様の多大なご愛顧により、長年、パンを焼いて来ました」
「しかし、いつの間にか、身体に病いが・・・苦しい病が押し寄せ・・・」
「本人も復帰を強く望んでいたのですが・・・」
孝太は、ここで、言葉が止まった。
真奈は、顔を抑えて泣き出した。
孝太は、真奈の手を握り、挨拶を再開。
「神からのお召しには逆らえません」
「静かに、安らかに、天国に召されていきました」
「本当に、皆様、長年、父のパンを、柿崎パン店のパンを愛していただき、ありがとうございます」
「それから、今後も、心を込めてパンを焼きます」
「今後とも、柿崎パン店と田中珈琲豆店のご愛顧を、どうぞよろしくお願いいたします」
孝太が挨拶を終えて、葬列者に頭を下げると、大きな拍手、目頭を抑えている人も多かった。
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