第79話ケーキイベント(1) イベント前日

ケーキイベントの前日になった。

当日は、柿崎パン店と田中珈琲豆店の休業日のため、孝太と深田美紀は、赤坂クイーンホテルに前日の夜から泊まり込む。

柿崎パン店と田中珈琲豆店の他のメンバーは、当日に「特別招待」。

ただ、それだけでは参加しづらいので、大使館夫人や大使館員、ホテル関係者にパンをプレゼントする予定になっている。


さて、柿崎孝太と深田美紀は、お迎えの車で赤坂クイーンホテルに到着。

早速、レシピを持って、懐かしいケーキ厨房に急ぐ。


ケーキ厨房のドアを開けると、松田パテシィエ長と、馴染みのパティシエたちは、全員が笑顔で待っていた。


「お帰り!」

「お待ちしていました!」

「ご成功おめでとうございます!」

盛大な拍手とともに、いろいろな声がかかる。


孝太は照れて苦笑。

まず全員に頭を下げる。

「みんな、我がままを言ってごめん」

「俺がいなくなって、また事件もあったそうで、大変だったな」

「忙しかっただろうな」

孝太を待っていた全員が、涙を拭いたり、下を向いたりする。


孝太は続けた。

「レシピは、昨日、松田パテシィエ長に連絡した通り」

「少し畑違いの、紅葉羊羹も入るけれど、よろしく頼みます」


松田パテシィエ長が、軽く孝太の肩を叩くと、また全員が拍手、いろんな声がかかる。


「メインは孝太さんオリジナルのチョコレートフルーツケーキの逸品で、それに加えて、各国大使夫人出身地のケーキなんて、これは喜ばれますよ」

「全員が出身地の話題をして、盛り上がるよね」

「僕たちも珍しいケーキで気合が入ります」

「紅葉羊羹なんて、私では出来ない発想、デザインも和の美しさですね」


孝太が盛り上がる全員を手で制した。

「明日は、世界一のケーキをお出ししよう」

そして、力強い声。

「みんな、心意気を見せてくれ!」


孝太は、再び大きな拍手に包まれている。


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