第76話女子会(1)

忙しい業務を終えて、今夜は中華街で女子会。(祥子の呼びかけ、全員が二つ返事)

その中で、孝太の高校生時代の話になった。

祥子

「孝太君ね、今と変わらなくてね」

真奈

「うん、学校でも頑固者でしょ?群れないし、独立系」

美和

「何か事件でもあったの?」

祥子は含み笑い。

「うん、孝太君らしい事件」

ヴィヴィアン

「知りたい、マジに、面白そう」

ミシェル

「待ちきれない、早く!」


祥子は、「コホン」と咳払い、話し始めた。

「京都への修学旅行の前日だったかな」

「突然、校内一の美少女が孝太君の前に来たの」

「朝のホームルームの前にね」

「その美少女、真っ赤な顔で、孝太君を見つめて」


美和

「え?修学旅行前に告白?」

ヴィヴィアン

「気になるなあ・・・何があったの?」

ミシェル

「美人の祥子さんが美少女って言うのだから、かなりの美形だね」


真奈は思い出したらしく、プッと吹いている。


祥子は続けた。

「うん、アイドル並の美少女で、校内カースト一位」

「どちらかと言えば、近寄りがたいタイプ」

「独立系の孝太君とは、全く接点があるとは思えないの」

「だからクラスの子も全員、え?って感じ」


女子全員が話に引き込まれている。


祥子は、ゆっくりとした話し方で、続けた。

「で、その校内カースト一位が、孝太君に言ったの」


「京都で、一緒に歩いて欲しいんです」


「もうね、クラスの子が全員。えー――?って雰囲気」

「マジ?孝太君と何があったの?って」


祥子は、少し間を置いた。

「事情を知っている子がいてね」

「その前の日、土砂降りで」

「校内カースト一位の子が持っていたのは、折り畳みの傘」

「たまたま、居合わせたのが孝太君、ゴツい大きい黒い傘を持ってね」

「で、孝太君が、これ、使えよって、校内カースト一位の子に」

「校内カースト一位の子が、え?と受け取ったけれど」

「孝太君は、そのまま土砂降りの中を走り去った・・・と」


真奈が苦笑。

「孝太兄ちゃん、ずぶ濡れ、泥まみれで帰って来てさ」

「修学旅行前って言うのに、マジに洗濯が面倒でね」

「誰に傘を貸したの?って聞いたら、名前も顔も知らないって」

「可哀想だから貸しただけって」

「母さんとマジに呆れたもの」


美和、ヴィヴィアン、ミシェルは、この時点で、食べるのを中断、話を聞くだけの人になっている。


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