第72話悪質マスコミ取材申し込みに対して
大盛況を続ける柿崎パン店と田中珈琲豆店に、マスコミ(テレビ)関係者が取材を申し込んで来た。
柿崎パン店は大混雑のため、マスコミ関係者への対応がとても無理だったので、田中保が対応をした。
その後、両店舗の業務終了を待ち、田中珈琲豆店で話し合いをすることになった。
保
「申し込んで来たのは、テレビ局。地方局ではなく、全国放送になる」
「人気店舗の柿崎パン店の再開と田中珈琲豆店をドラマ仕立てに」
「取材タレントも来る、お笑い芸人の杉本さんと、元国民的アイドルグループの海老原さんが、実食取材」
孝太は、全く興味がないらしく、横を向いている。
祥子は、厳しい顔。
「あまり、いい噂は聞かないよ」
「横浜元町の珈琲屋さんに知人がいて、その店にも同じ番組が取材」
「取材協力費を払えとか、スタッフ10人以上の飲食代も無料にしろとか」
「タレントの態度も酷いとか」
「取材してあげている、そんな上から目線で」
「これは、きっぱりと、断るべき」
美和も、祥子の意見に賛成する。
「私も、あのテレビ局とタレントをよく知っています」
「時々、ホテルにも来たから」
「要するに、ユスリタカリの人たち、相手にする必要はない」
「テレビに出ているから偉い、マスコミ関係者だから偉い、そんな程度の悪い誤解をいしているヤクザみたいな連中」
「取材協力費とか、スタッフの飲食代の話は、番組制作費を取材の相手に払わせたいって、セコイ意図があるから」
ヴィヴィアンも続く。
「これ以上宣伝されても、お客が増えても、パンを焼く量は増やせないと思うの」
「そんな変な人たちにパンを無料で、ってことはしたくないし」
「柿崎パン店のパンを食べたくて、行列にもめげずに買いに来てくれる人に尽くしたいの」
真奈は、その番組を見たことがあるらしい。
「ドラマ仕立ても、演技がワザとらしくてね」
「お笑いタレントも、海老原も、真面目に宣伝する、と言うよりは、茶化して笑いを取るような、嫌らしさがある」
「そもそも取材相手に敬意を持っていない」
「美和さんの言う通り、テレビタレントだから、有名人だから、一般人より偉いって思い込んでいる人たち、それが嫌」
ヴィヴィアンから通訳してもらっていたアランも発言。
「そもそも、これだけ繁盛しているのに、そんな悪質マスコミに協力する必要はないと思う」
「フランスなら、取材協力費を言われた時点で、業務妨害で訴えるよ、取材を申し込んで来たのに、どうして取材される方が、そんなお金を払うの?」
ミシェルもキッパリ。
「そんな取材なんて入れたら、お得意様のパンがなくなります」
「お得意様を大事にしない店は、ありえないと思います」
黙っていた孝太が口を開いた。
「丁重にお断わりする」
「それでも粘って来ても、応じない」
「あまり酷かったら業務妨害で警察に通報する」
孝太の意見に全員が同意し、その晩の話し合いは終わった。
尚、そのマスコミ関係者は、ほぼ予想通りに、強引な取材依頼を続けた。
混雑する店の前に、強引に割り込みして取材車両を停め、テレビクルーが無許可でカメラを設置して、行列客を撮った。
お笑いタレントと、海老原嬢も顔を見せ、行列を無視して柿崎パン店に入ろうとしたけれど、行列客の反感を買った。
最終的には、孝太が警察に通報し、マスコミの業務妨害が認定された。
その後、各マスコミにも、失態が報道され、番組は中止になってしまった。
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