第69話深田美紀の悪戦苦闘 ケーキイベントが具体的に
深田美紀も、話し合い翌日から、悪戦苦闘となった。
何しろ、孝太の指導が鬼のように厳しい。
道具を持つ時の姿勢、足の幅から徹底的に直された。
しかし、深田美紀は落ち込んではいられなかった。
「世界一のパティシエ柿崎孝太のケーキ作り」をするのだからと、孝太の厳しい指摘や指示に、むしろ闘志がわいた。
そんな深田美紀の様子を見て、美和は驚くし、感心もする。
「前とは、目の色が違う、動きのシャープさが違って来た」
「ハツラツと動いているって感じ」
「ホテルの時の欲求不満顔が全くない」
祥子も深田美紀を気遣う。
「美紀ちゃんなら、必ずできるよ」
「孝太を信じて、口は厳しいけれど、悪意は全くないよ」
「すごく動きが良くなっている」
真奈、ヴィヴィアン、保も同じような評価。
それぞれに励ましたこともあり、深田美紀の技術はかなり高まり、孝太もケーキイベントの話をするようになった。
孝太
「各国大使夫人の出身地のケーキを作る、このノートに描いた絵を見て欲しい」
深田美紀
「はい、勉強になります、拝見します」
「よろしくお願いいたします」
孝太
「フランス大使夫人がリヨン出身なのでタルト・ア・ラ・プラリン」
「つまり、赤いプラリネの入ったタルト」
「リヨンではどのお菓子屋さんやパン屋さんにも置いているほど有名なタルトなので、懐かしいと思う」
深田美紀は、「はい!」と目を輝かす。
孝太
「ベルギー大使夫人はリエージュ出身、タルト・オ・リ」
「お米のタルトになる、リエージュ州発祥で、カスタードで甘く柔らかく煮たお米でできたタルト」
深田美紀は、孝太の発想に「はぁ・・・」と感心するばかり。
孝太
「デンマーク大使夫人は。コペンハーゲン出身。エーブレスキーバ」
「デンマーク家庭には1家に1台、必ずこのエーブレスキーバ焼き器ほどの定番菓子」
深田美紀は「デンマークでは、おなじみのけーきですね」と、孝太の気配りに感心する。
孝太
「イタリア大使夫人は、シチリア出身、カッサータ」
「糖衣でコーティングされたリコッタチーズクリームに、砂糖漬けフルーツや、スポンジ生地、チョコレートなどを混ぜたケーキ」
深田美紀は、「色も鮮やかですね、それと全体のバランスもお見事」と驚くけれど孝太の顔は厳しい。
「明日から、試作を始める」
「追加で和風ケーキの試みもある」
深田美紀は「はい!」と背筋を伸ばしている。
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