第67話話し合いは続く。

話し合いは続く。


孝太

「パン屋については焼く量は増やさないと、来てくれて買えない人に失礼になる」

「それだから、焼き手を増やす、そんな話になったけれど」


真奈が続く。

「例えば、コッペパンを1人で5本とかバゲットでも他のパンでも同じ」

「つまり、まとめ買いをするお客様が多くて、それですぐに品切れになる」

「でも、まとめ買い制限もどうかなあと」


ヴィヴィアンも真奈に同意。

「まとめ買いする人には、それなりの理由があると思うの」

「家族の人とか、職場の人全員が食べたいとか」


孝太も頷く。

「結局、焼く量を増やすしかない、それが結論」


保が話題を変えた。

「以前、フランス大使館から話があった件で、フランス以外の大使館からのパンの焼き手の話は?具体的には?」


孝太は即答。

「デンマーク、ベルギー、ドイツ、イタリア大使館の推薦する焼き手が再来週から一週間交代で」

「各国独自のパンを焼いてくれるとのこと」

「何でも各国の食文化のPR費用からなので、人件費と素材費は大使館持ち」

「それと、各国のパン職人も、柿崎パン店が焼くコッペパンとか、他のパンも焼いてみたいとか」


美和がうれしそうな顔。

「美味しいパンとなると、パン職人は気になるのかな」


ヴィヴィアンが頷く。

「それはそうだよ、孝太のコッペパンはマジに美味しいし、クリームパンも好き、アンパンは癖になる、私も焼き始めて面白いもの」


深田美紀が孝太に質問。

「ところで孝太さん、田中珈琲豆店で出しているケーキは?」


孝太は、少し苦しい顔。

「申し訳ないけれど、時間が足りなくて」

「レアチーズとザッハトルテ、フランボワーズ、モンブラン」

「それを各50個・・・すぐに売り切れてしまって」


保は首を横に振り、孝太をフォロー。

「いや・・・孝太君は働き過ぎくらい」

「それに、それ以上作っても、うちの店のショーケースにも、入りきれない」

「そもそも、売り上げが以前より5倍以上になっているよ」


美和も孝太に聞く。

「例のケーキイベントの準備は大丈夫?」


孝太の顔は、少し明るくなった。

「それは、順調に、後はケーキの並べ方程度と・・・」

「もう少し追加したいのは、和の要素」

「時間を見つけて、和菓子の店に行く」


深田美紀が孝太に懇願。

「是非、ご一緒させてください」


しかし、孝太は渋い顔。

「さっき話した四種のケーキがしっかり焼けないと、深田さんが行っても無意味」


下を向いて泣き顔になる深田美紀にヴィヴィアンが声をかける。

「これも孝太師匠の厳しい指導」

「しっかり教えてもらって、早く一人前にね」


孝太は苦笑。

他の全員は、頷いている。

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