第65話田中珈琲豆店での話し合い

その日の夜、孝太、真奈、ヴィヴィアンは隣の田中珈琲豆店に入った。

その目的としては、当然、祥子と保を交えて「今後の相談」、ということになる。


孝太が、疲れの見える顔で、口を開いた。

「パンの焼き手と売り子は来週だよね」


ヴィヴィアン

「うん、月曜日に来る」

「焼き手はフランス人の男でアラン、28歳、パリから、私の従兄」

「売り子もフランス人の女の子。ミシェル18歳、これは副大使の娘さん」


全員が頷くと、祥子がヴィヴィアンに続く。

「田中珈琲豆店もご存知の通り、人が足りない」

「それで、驚くかもしれないけれど・・・美和さん」


真奈は、驚いた顔。

「え・・・それ・・・マジですか?」

祥子は落ち着いている。

「うん、明日から来るって」


保も口を開いた。

「祥子さん、いろいろ悩んだらしい」

「でも、あのプライドの高い彼女がここで働きたいと言う」


ヴィヴィアンは笑った。

「私は、全く気にしない」

「パン焼きで精一杯だから」


真奈も、頷いた。

「私もレジで精一杯」

「いろいろ言われたけれど・・・心の底から悪い人と思えないの」


孝太は目を閉じて発言。

「美和さんは、接客と経理はすごいよ、見習うべきことは多い」

「ホテルの第一線にいたから、誘客もできる」


祥子は頷いた。

「パン店でもいいし、うちの喫茶でもいいかな」


保が孝太に尋ねた。

「ケーキも実は人が足りないのでは?」


孝太は、苦しそうな顔。

「申し訳ない、ケーキもすぐに売り切れてしまって」

「とにかくパンを焼くのに精一杯で」


話し合いが滞った時だった。


田中珈琲豆店のドアが開いた。

そして杉浦美和と、赤阪クイーンホテルのパティシエ深田美紀が入って来た。


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