第55話ヴィヴィアンの喜び
ヴィヴィアンは、孝太や真奈、祥子、保との「仕事と生活」に、今まで感じたことのないような喜びを感じている。
「孝太の集中している時の顔は、本当に美しい」
「動きもシャープで、見ていて飽きない、絵になるなあ」
「でも、やはりケーキ職人、本人も自覚しているようにパン職人の筋肉が育っていない、すぐに疲れ気味になる」
「私が支えたい、いや、支えるしかない」
祥子と孝太の関係にも、「入り込めないもの」を感じているけれど、それは「孝太との接触時間の差」と思う。
しかし、それ以上に、孝太との共同作業が楽しい。
「あの大使夫人それぞれの出身地のケーキのアイディアは、さすが」
「腕自慢ばかりのパリのケーキ職人では、その発想が無い」
「自分の腕を、味を押し付けるだけだから」
「そういう面白いアイディアを言うから、ますます一緒に仕事したくなる」
「それに・・・さっきつぶやいた各国大使夫人出身地のパンもって・・・あれも面白いなあ」
「孝太店は、フランス大使館だけでなくて、ケーキイベントに出席する各国大使館も巻き込むよ、そんなのパリのパン屋でもない・・・ますます焼き手の気をそそる」
ヴィヴィアンは、孝太の妹の真奈も大好きになった。
「実に可愛くて健気」
「本当に妹にしたい・・・妹がいなかったから」
「仕事も正確で、私に気をつかってくれる」
「いろんなアイディアをポンポンと出す」
「ディスプレイを作るのが上手で速い」
「フランス語を熱心に聞いて来るし、日本語も教えてくれる」
「・・・時々、頑固な孝太と喧嘩して涙目・・・私に甘えて来る、それも可愛い」
田中珈琲豆店の店主保も、お気に入り。
「私を含めて、全員を大らかにまとめている」
「ルックスも美形」
「疲れているのを上手に察して、美味しい珈琲を素晴らしいタイミングで出してくれる」
「日本のお父さんって雰囲気」
そして、実は「恋敵」のはずの祥子も好きになってしまった。
「祥子が孝太を説得してくれなかったら、こんなに楽しい仕事はできなかった」
「心に傷を作って泣きながら飛行機に乗って」
「パリでつまらない生活になったに違いない」
「祥子は、強いなあ」
「祥子と一緒に座っていると、落ち着く」
「・・・包容力?」
「今後はわからない、でもしばらくは、この面白い仕事と生活を続けたい」
「その道を開いてくれたのは、祥子だもの」
「できれば、一生の親友になりたい」
「・・・孝太とのことは難しいけれど、人として、祥子が本当に好き」
保が淹れてくれた珈琲を飲みながら、そんなことを考えていると、真奈が呼びに来た。
「ねえ、ヴィヴィアン、孝太が言ったことが本当になった」
「たくさんの大使館の人が来て、孝太とパンの話になっている」
「孝太がもたついているから、手伝ってあげて」
ヴィヴィアンの心が浮き立った。
「うん!真奈ちゃん!一緒に聞こう!」
珈琲を一気飲み、真奈と握手、一緒に歩き出している。
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