第54話再開パン屋は大盛況 職人を雇うことに 美和の反応
話し合いの二日後に、柿崎パン店は再開。
その当日から、孝太と真奈の慎重な予想と異なり、大盛況、長い行列になり、午前中には完売、それが五日間続いた。
あまりの盛況と売り切れの連続で、再び話し合いを持つことになった。
孝太は苦笑い。
「もっと焼いたほうが・・・と思うけれど、こねる筋肉が持たない」
「やはりケーキ職人で、パン焼きの筋肉が育っていない」
売り子が中心の真奈も、疲労困憊。
「たくさん買ってくれるお客様が多いの」
「9時に開いて、11時には売り切れ」
「それはうれしいけれど、行列が長いので、焦ってしまって」
「レジが二つなら、10時過ぎには完売かも」
ヴィヴィアンも肩で息をしている。
「まだ大使館の広報には間に合っていないけれど、載せたら、また増えるよ」
「あと最低二人は必要」
隣の田中珈琲豆店からも、話し合いに参加している。
祥子
「うちの店も行列」
「珈琲を飲みながら、すぐに食べたい人が多くて」
「珈琲器具の展示を減らして、喫茶スペースを増やしたけれど」
「私と父さんだけではかなり苦しい」
保も頷く。
「客が増え続けているし、私の店でも人が足りない」
「雇うことを考えているし、目途も立っている」
孝太が全員を見回し、頭を下げた。
「申し訳ない、見通しが甘い、慎重過ぎたかな」
真奈も頭を下げると、ヴィヴィアンが首を横に振る。
そして、新たな提案。
「とりあえず、2人、雇うでどうかな」
「実は、大使館でフランス人のパン職人に、声をかけてあるの」
孝太は、ホッとした顔。
「柿崎パン店としては、すぐに来てくれるなら、お願いするしかないかな」
「そうでないと、せっかく柿崎パン店を楽しみに来たお客さんを裏切り続けることになる」
「俺の身体も持ちそうにないし」
結果として、誰からも反対意見は出されず、ヴィヴィアンの提案を受け入れることになった。
さて、シンガポールに旅立つ二日前、美和は柿崎パン店再開と大盛況の情報を知った。
情報を持ち込んだのは、赤坂クイーンホテルの日本料理店の店長の源。
「何でも、フランス大使館も全面支援で、味も売り上げもすごいらしい」
「さすがだなあ、孝太は、腕もいいが・・・やはり何かを持っている」
美和は、自分の耳が信じられなかった。
「どうして?あの孝太が?私なしで?」
「ヴィヴィアン?・・・ヴィヴィアンならわかるけれど、大使館まで?」
美和は、居ても立っても居られなかった。
ホテルを無断で飛び出し、横浜のパン屋に向かった。
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