第53話散らし寿司を食べながら、盛り上がる

ヴィヴィアンは、散らし寿司も食べて帰ることになった。

言い出したのは、祥子。

「せっかくこのメンバーで同じ仕事をするんでしょ?」

ヴィヴィアンは、少し戸惑ったけれど、孝太も真奈もヴィヴィアンを誘った。


ヴィヴィアンにとっては初めての味なので、話が弾む。

「これは・・・フランスには無い味」

「甘酸っぱくて・・・美味しくて、食べ飽きません」

真奈も笑顔。

「私と孝太の母の味、おめでたいことがあると、いつもこれ」

祥子が続く。

「私の母は早くに亡くなって、孝太君と真奈ちゃんのお母さんが、私のお母さんみたいなもの、この散らし寿司も、教わったの」

孝太は黙って黙々と食べている。

保が口を開く。

「実際にパンを焼くのは、いつからに?」

「期待している人も多いから」

孝太は、少し考えて答える。

「親父の病院のことは気にかかるけれど・・・」

「いつでも・・・しかし、店の掃除と細かなディスプレイの準備もある」

「明後日ぐらいかな」

真奈も頷く。

「明後日の朝6時に起きて、始めるぁな」

孝太がヴィヴィアンを見る。

「ヴィヴィアンは。都合のつく時で」

ヴィヴィアンは、笑顔。

「明日来ます、ご心配なく」

祥子は驚いてヴィヴィアンを見た。

「間に合うの?」

ヴィヴィアンは、笑顔を変えない。

「アパートが山手に」

「自転車で10分」

全員が驚く中、ヴィヴィアンは続けた。

「例の小麦粉は明日、届けさせます」


その後は、孝太のケーキイベントの話にまで進んだ。

「素案はできているの?内緒にするよ」

孝太は頷く。

「はい、おおよそは」

「少し調べることはある」

真奈

「調べることって?」

孝太は即答。

「参加する各国大使夫人の出身地と、ゆかりのあるケーキ」

「それを出そうかなと・・・もちろん、それ以外にも秘策はある」

ヴィヴィアンは頷く。

「面白い、さすが孝太さん、はるか離れた日本で故郷のケーキ」

「しかもパティシエはコンペ優勝の柿崎孝太」

「凄い話題になります」

「そのうえ、秘策?ワクワクします」

祥子は笑顔でヴィヴィアンの顔を見る。

「ヴィヴィアンにも、各国大使夫人の故郷ケーキ調べに参加してもらったら?」

ヴィヴィアンは、満面の笑顔で頷いている。


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