第51話孝太と真奈の考え

驚き、少し考えていた孝太が口を開いた。


「確かに、いずれは誰かを雇うことは考えていた」

「誰かを雇えるようになれば、の希望とか楽観もあるけれど」

「パン屋には、パンの焼き手と売り子が必要」

「俺と真奈が焼くのに忙しいと、売り子がいなくなる」

「その結果、店が混乱する」


ヴィアンの目が輝く。


孝太は続けた。

「しかし、再開後のある程度の期間は、数量限定販売を考えていた」

「俺と真奈が対応できるだけの量」

「最初は少量から、混乱が生じないように焼いて売る」

「それで今後もパン屋を継続可能と判断したら、少しずつ焼く量を増やす」

「数量的に俺と真奈だけでは無理になった時点で、焼き方か、売り子を増やす」

「売り上げが見込まれるから大量に焼く、それでは不確実過ぎると、考えていた」


輝いていたヴィアンが肩を落とした。

「それ、慎重過ぎない?」

「私、手伝いたいもの」

「私のバゲットを日本の人に食べてもらいたいもの」


しかし、孝太は黙ってしまった。

ヴィヴィアンの顔を見ない。


真奈が口を開いた。

「私は、今まではお父さんを手伝っていただけなんです」

「本格的に再開する、兄と私でとなると」

「二人とも、焼き手としても経営者も初心者」

「慎重に、損が出ない程度に、量を少しずつ増やす、そのほうがいいいかなと」

「見込みや楽観では、商売は出来ない、そう思っていて」

「ですから、ヴィヴィアンさんのお申し出はありがたい、そう思いますが・・・」

「一緒に働いて、給与をお払いする段階ではなく」


田中保と祥子は、何も言えず、考え込んでいる。


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