第48話ヴィヴィアンからの電話

孝太は、深呼吸をして、電話に出た。

「はい、柿崎です」


ヴィヴィアンは、弾んだ声、しかも日本語。

「いろいろと、話をしたいことがあって」


孝太は、再び身構える。

「いつ、日本語覚えたの?」


ヴィヴィアンは即答。

「実は、孝太が日本に帰った後、日本語学校に通ったの」

「どうしても、習いたい理由があって・・・それは孝太が原因だけど」


孝太はタジタジとなりながら、ヴィヴィアンに想っていたことを返す。

「ところで、今日の用件は?」

「大使館の関係は、光栄だけれど難しい」


ヴィヴィアンは、少し笑う。

「そうではないの、別のお願い、と言うか提案」


孝太はヴィヴィアンの次の言葉が読めない。

「うん」と答えて、少し待つ。


ヴィヴィアン

「ところでね、これが本題」

「私のおじいさんが、実はパリでパン職人なの」


孝太は驚いた。

「へえ・・・そうなんだ」


ヴィヴィアンは明るい声で続けた。

「それでね、実は私も、おじいさんの手伝いで、小さな頃からパンを焼いたの」


孝太はヴィヴィアンの意図がまだ不明。

「うん・・・で、ヴィヴィアンは何がしたいの?」


ヴィヴィアンの声が、少しだけ小さくなった。

「でね・・・孝太の店で、パンを焼いてみたいの」

「その、具体的な話をしたいの」


孝太はまた、身構えた。

それはヴィヴィアンの声が、あまりにも真剣だったから。

「具体的な話って何?」


ヴィヴィアンは、また真剣な声。

「とにかく、今から相談に行きます」

「叔父にも相談済み」


孝太は驚いた。

「フランス大使に?」

「それなら待つよ」


そこまでで電話を終えた孝太は、ヴィヴィアンの意図が不明で、考え込んでいる。





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