第43話孝太の怒り、美和への訣別宣言

「あの・・・」

孝太は、真奈の前に立ち、厳しい顔で美和を手で制した。


美和は、まだ怒り顔。

「何よ!何をしていたの!」

「あの・・・って何?どうしてボケたことしか言えないの?」


しかし、孝太は落ち着いている。

「美和お嬢様、全部聞こえて来た」

「声が大き過ぎ、大騒ぎしないで欲しい」

「誰が見ているかわからない」

「とにかくパン屋の中に」


美和はムッとした顔のまま、孝太と真奈に続いてパン屋の中に入った。


孝太は、厳しい顔。

「とにかく、真奈は退院したばかりなんだ」

「多少は動けるけれど、しっかり回復しているわけではない」

「その真奈に、荒げた声を・・・しかもいきなり・・・人としての情を感じない、無神経の極み」


この指摘に、美和は、いきなり真顔に変わる。

「あ・・・ごめんなさい・・・つい・・・」

「私・・・孝太のことで気が高ぶって」

「そうよね・・・これは・・・真奈ちゃんに責任はないよね、ごめんなさい」


真奈は美和の大騒ぎに疲れたのか、下を向いている。


厳しい顔で孝太は続けた。

「僕はパン屋がそんなに下賤な仕事とは思っていない」

「ケーキが素晴らしい仕事でセレブのための仕事とも思っていない」

「それを否定するなら、僕と美和お嬢様の間には、会話は成立しない」


美和の顔が青くなった。

「そんなこと言わないでよ・・・孝太」

「そのお嬢様って・・・冷たすぎ・・・」

と言うのが精一杯。


孝太の顔が、ますます厳しくなった。

「ケーキイベントについては、臨時パティシエとして復帰する旨、杉浦支配人と決着がついている」

「そのために抜かりない準備もする」

「でも・・・いきなり押し掛けて、真奈にあんな酷いことをするなら」

「美和お嬢様とは、今後話もしたくない」

「顔も見たくない」

「だから、今すぐ帰って欲しい」


美和は、ガタガタと震え、ついには泣き出してしまった。

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