第41話厨房改装の理由 美和の怒り
店主の保が苦笑しながら説明をする。
「元々、古くなっていたから設備の交換時期だったんだよ」
「妻が生きていた頃は、喫茶店と言っても多少の食事メニューを出していた」
「でもあの世にいった後は、孝太君も知っている通り、孝太君の家のパンと出前のケーキを出していただけ、その出前のケーキ屋さんも高齢で続けられそうにないらしい」
「それで、孝太君がよければ・・・この厨房でケーキを焼いてもらいたい」
孝太は真奈の顔を見た。
「確かに、発酵とか焼きの時間に真奈が見ていてくれれば・・・」
真奈は笑顔
「いい話だと思うよ、そうさせてもらおうよ」
祥子も後押しをする。
「お願い、孝太君」
孝太には断る理由は無かった。
「わかりました、早速、明日から使わせてもらいます」
保は、すこぶる上機嫌で、ホッとした顔。
「これで、世界最高のパティシエのケーキが食べられるし、親父さんへの義理も果たせる」
「何しろ柿崎パン屋のパンを食べながらの珈琲は絶品、それでこの店もやってこられた」
「それに孝太君のケーキが加われば・・・」
さて、同じ時間、杉浦美和は、「他人行儀な連絡後」、孝太からの連絡が「全くない」ことに苛立ちを覚え始めていた。
「全く失礼な・・・」
「何様と思っているの?」
「このセレブの私が面倒を見てあげたのに」
「孝太以上に収入も育ちも高い男との見合い話も声もかかると言うのに」
しかし、そんなことを思っても、孝太から連絡は全くない。
父の杉浦支配人も、美和の気持ちを察して、注意をする。
「美和、諦めたほうがいい」
「孝太君は、大使夫人のケーキイベントに、一時的にでも復帰してくれる」
「それだけでも、ホテルは安心している」
「孝太君は自分で自分の将来を決めた」
「確かに残念なことではあるけれど、こちらが、妨害することは出来ない」
杉浦美和は、そんな父の注意には聞く耳を持たなかった。
「うるさい!」
「何を言っても、無駄!」
「私は、孝太が欲しいの!」
「力づくでも、無理やりでも、連れて帰るよ」
「そうしないと、気持ちがおさまらないもの」
「今日は真奈の面倒もあるだろうから仕方ない・・・でも明日の昼までに連絡がなかったら・・・容赦しない」
杉浦美和の目には、狂気まで宿っている。
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