第40話 試し焼きパンは好評 予想外の「相談」とは?

祥子は笑顔のまま

「うちの店に行けば、父さんが説明するから」


そう言われたら、孝太はどうしようもない。

「わかった、そうする」


さて、孝太と真奈、祥子が焼き立てのパンを持ち、隣の田中珈琲豆店に入って行くと、祥子の言う通り、孝太も覚えがある「パン屋の昔馴染みの客」が既に喫茶コーナーの広いテーブルに着き、待機状態。


孝太は少々緊張気味に

「まだまだ、試し焼きの段階ではありますが」

真奈と祥子と協力して、パンを切り分け、客の前に並べて行く。


珈琲豆店の店主保が珈琲を配り終え、試食が始まった。


「うん・・・美味しい・・・親父さんの味に近いけれど」

「少し、違う・・・でも、これも好き」

「孝太君のパンのほうが、甘い・・・軽い・・・」

「華やかな感じがする・・・飽きが来ない」


味は好評らしく、少し緊張気味の孝太の顔が緩んだ。

「バターと砂糖の使い方が親父とは違うかも」

「でも、喜んでもらって、ありがたい」


真奈も笑顔

「これで練習を積んでパン屋も再開できるかな」


試食に加わっていた店主の保が、立ちあがって孝太を拍手。

すると、パンを食べた客全員が保と一緒に拍手。


「なるべく早く再開して欲しいな」

「楽しみです」

・・・・

頭を下げながら、孝太は保の顔を見る。

「相談があると聞きましたが」


保は笑顔のまま、孝太を手招き、店内のショーケースに導く。

「今は、ケーキを置いてないけれど、起きたいなあと」


孝太は「はい」とだけ、保の真意がわからない。


保は孝太に頭を下げた。

「孝太君が良ければ、焼いてくれないだろうか、それをお願いしたいのさ」


孝太は、予想外の「相談」に驚き、迷った。

「パン焼きの厨房だけで、手一杯で・・・」


しかし、保は笑顔のまま、「こっちに来てくれる?」と孝太を隣の部屋に導く。


導かれるままに、隣の部屋に入るなり、孝太は驚いた。

「え・・・改装したんですか?」


孝太の目の前には、ピカピカに磨かれた新品の厨房がある。


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