第27話折衷案

「宮崎さん、わざわざありがとうございます」

柿崎孝太は、仕入先担当者の宮崎にお礼を言い、続いて杉浦美和、ヴィヴィアン、田中祥子を紹介。

宮崎は「これはこれは」と驚いた顔。

その宮崎の耳に小声で「現状」を告げると、もっと驚いた。

「そうですか・・・それは悩みますね」

ただ、宮崎は、長居は出来ないようで、材料費を柿崎孝太から現金で支払いを受け、すぐに帰った。


柿崎孝太は杉浦美和とヴィヴィアンに頭を下げる。

「ホテルの事情もあるし、フランス大使館の御厚意もあるけれど、明日はパンを焼く」


不満そうな、がっかりした顔になった2人にもう少し、つけ加えた。

「まあ、仕方ない、折衷案だ」

「ホテルでのケーキのイベントまでには、まだ2か月もある」

「それまでにパンを焼けるようにもするし、ケーキのレシピも考えておく」

「今日のところは、それでどうかな」


杉浦美和とヴィヴィアンの顔がパッと輝いた。

杉浦美和

「私も明日から、ここに来る」


ヴィヴィアン

「もちろん、私も」


柿崎孝太は、渋い顔。

「いや、人が多過ぎる」

「できれば、一つ一つの作業を丁寧にしたいのでね」


杉浦美和

「大丈夫、手元を手伝うくらい」

ヴィヴィアン

「私はフランスパンを焼いてみたいの」


田中祥子は、ようやく口を挟む。

「珈琲ぐらいはお持ちします」

「それと味見かな」


柿崎孝太は、3人の女性の扱いにも苦慮しそうである。


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