第26話説得を諦めない2人

パン屋に入って来た3人を見て、柿崎孝太は「え?」とだけ。

何故来たのか、さっぱりわからない。


その柿崎孝太に、杉浦美和。

「やはりね、孝太君、どうしてもケーキを焼いて欲しいの」

「そうでないと、ホテルが困るの」

「金額は言えないけれど、大損失になる」

「宿泊から会議まで、キャンセルになるから」

「官邸からも外務省からも、何とかならないかって、何度も電話」


ヴィヴィアンも続く。

「叔父の大使も困惑していたよ」

「すでにあちこちに声をかけているし、今さら他のホテルなんて無理」


田中祥子は、孝太の内心を察して、心配そうな顔だけ、言葉は出さない。


柿崎孝太は、返事に窮した。

「俺の仕事は・・・俺が決めていいのでは?」

「それが筋だと思うが」


杉浦美和は納得しない。

「自分で満足するパンが焼けるまで時間がかかるって言ったじゃない」

「ホテルの仕事を終えてからでは困るの?」


ヴィヴィアンは、また別の提案。

「だから、ホテルでの仕事を終えて、その後に大使館に来たらどう?」

「大使館でパンを焼いてもいいよ」


田中祥子は、何も言わず、膠着状態になっていると、店の駐車場に車が入って来た音。

少しして、仕入先担当者の宮崎が材料を持ち、入って来た。

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