第25話柿崎孝太は父の仕入れ先の商社に連絡を取る。

パン屋に戻った柿崎孝太は、父の小麦粉等の仕入れ先の商社に電話をかけた。

「柿崎パン店の息子の孝太と申します」

「店主が病気のため、長らく休んでしまって申し訳ありません」


仕入先の担当者は、宮崎と名乗った。

「宮崎と申します、お父様の具合はいかがですか?」

「こちらも大変心配しておりました」


柿崎孝太が、店主の復帰は難しい旨を伝えると、残念そうな声。

「そうですか、長年続いた店でもありますし、実に寂しく思います」

「息子さんは・・・孝太さん・・・超一流のパティシエとお聞きしております」

「パン屋は・・・諦めておりました」


柿崎孝太は、語調を少し崩した。

「あまり、お気になさらずに」

「ところで、長年仕入れて来た小麦粉を欲しいのですが」

「差し支えなければ、こちらから買いに行きたいのですが」


仕入先担当者の宮崎は、驚いた声。

「もしかして・・・孝太さんが焼かれるのですか?」


柿崎孝太は慎重。

「はい・・・と言っても試作品を」

「パン焼きも覚えたい程度で」


宮崎はうれしそうな声。

「それなら、お届けにあがります」

「本日早速でもよろしいでしょうか?約40分後になります」

「小麦粉以外にもお父様にお世話になっておりました材料をお持ちいたします」


柿崎孝太は、遠慮する理由がない。

「ありがとうございます、お待ちしております」



柿崎孝太が、仕入先と連絡を終え、ホッとしていた時だった。

パン屋の扉が開き、杉浦美和とヴィヴィアンが入って来た。

そして、その後ろに田中祥子。

杉浦美和とヴィヴィアンは、難しい顔。

田中祥子は、困ったような顔になっている。

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